この記事では、英語書籍教材「ずるいえいご」を紹介します。
本来、本書タイトルは「すてるえいご」にしたかったそうです。しかし、
そのタイトルじゃ、売れない売れないって言われて・・・
(著者談。本書導入部より)
ということで、やむなく「ずるいえいご」にしたとのこと。
何を「すてる」のでしょうか?
何が「ずるい」のでしょうか?
レビューしていきましょう。
Contents
教材著者の紹介
著者:青木ゆか(あおき ゆか)さん
イラスト:ほしのゆみさん
(以上、本書カバー裏より抜粋)
教材の概要
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基本情報を書いておきます。
◆テキスト
B6サイズ、190ページ。
フルカラー。
◆CD等
なし
概要は以上。ここからは本書内容を詳しくみていきます。
学習内容の詳細
本書は、ざっくり言うと
「(単語が思い出せなくても)知っている言葉で言い換えることで、まったく会話に困らなくなる!」
という内容です。
本書はマンガと解説と練習問題が織り交ぜられていて、楽しみながら読んでいけるようになっています。
一方で、英会話教材としても内容の濃いものになっています。
ポイントのみ紹介していきます。
Part 1 話せることを知る「6つの心構え」
- 「正解か不正解か」ではなく「伝わるか伝わらないか」が大切
- 辞書に頼らない
- 「工夫して、いま手持ちのものをフルに活かせば、意外とできるんだ」という感覚を持つこと
- 正しい英語よりも、なんとか伝えようという気持ちを先に示すこと
- 知識の量よりも、「自分で紡ぎ出す力」を養うこと
- 正解はひとつではない
Part 2 言い換えの原則「4大柱」
- 8割すてる(そもそも100%伝えようとしないこと)
- 大人語をすてる(子供に質問されたらなんと答えるかを考えてみる)
- 直訳をすてる(わからない単語に固執しない)
- 抽象語をすてる(出来事・事実・発言ベースで話す)
Part 3 魔法のボックス-言い換えトレーニング編
ここでは、「すてる力」を身につける「魔法のボックス」を使って、言い換えのトレーニングをします。
例えば、「一目置く」を英語で言おうとしたとき、対応する英語がわからない。
しかしそこで辞書を引いて「一目置く」に対応する語を調べてはいけません。
自分が誰かに一目置いているなら、どんな気持ちかな・・・と思い浮かべて、自分の知っている英語で表現できないか考えるのです。
思いついたことをボックスに書き込んでいきます。
次のページには解答例が載っています。あくまで”例”なので、思いつけば何でもOKです。
このPart 3では、「息が合う」「足を引っ張る」「甘い(「甘やかす」の意味で)」など日本語の慣用句を英語で表現する練習問題が23問用意されています。
各ページ、ゆる~いイラストがあって楽しいです。
(英語教材テキストは、挿絵ぐらいはあってほしいですよね。本書のようにフルカラーでプロマンガ家のイラスト付きまでは望みませんが、まったくないのもどうかと。)
Part 4 魔法のボックス-応用編
ここでも引き続き、直訳しにくい慣用句を簡単な英語で言う練習をします。
「意地を張る」「胃に穴があく」「うしろめたい」「腕が鳴る」など18問。
ちなみにこのパートには「日本人のココがヘン」というコーナーがあり、どうでもよさが笑えます。
【おわりに】落ちこぼれ留学生が、すてる英語トレーナーになったわけ
著者・青木ゆかさんの体験談。
16歳でのイギリス留学での悲惨な挫折から、すてる英語を会得して海外の友達とガールズトークをするようになるまでの話が書かれています。
本書の内容は以上です。
良い点/イマイチな点
- 本書のいうように、「知っている単語で話す」スキルはとても有効だと思います。しかし英語学習全体を考えるときには、語彙・表現の幅を広げていくことも必要だと思います。
向いている人
- 学校の授業から長い間まじめに英語を勉強したが、いつまで経っても話せない人
- 辞書がないと会話ができないと思っている人
- 「○○って英語で何ていうんですか?」とつい聞いてしまう人
総評
「ずるいえいご」の総合評価・・・B評価(良い教材)
ということで、冒頭の「なにが『ずるい』のか?」については、「そんな方法で英語が話せるの?ずるーい!」という「ずるい」でした。
さて、本書は正確さよりも「とにかく伝わること」を目指します(コミュニカティブアプローチといわれます)。
「瞬間英作文」や「パターンプラクティス」などの、正確さやスピードを前提としたある意味機械的なトレーニング(オーディオリンガルアプローチと総称されます)とはまったく趣旨の異なるものです。
飛行機に乗っていて乱気流に出くわしたことを話したいとき、「乱気流ってなんていうんだっけ?」と思い出そうとするのではなく、「ジェットコースターみたいだった」とか「寝られなかった」とか、「乱気流」のために体験したこと、感じたことを話せばいいわけです。
乱気流(turbulence)という単語を知らなくても、会話はできるということですね。
語彙力を増やさなくてもいいのかというと、それは違うと思いますが、知っている言葉で会話をつなぐというスキルはとても使えると思います。
上の例で言えば、turbulenceという単語を知っていても、「怖かった」とか「はじめての経験だった」とか、どうでもいいことを話すことで自分のことを相手に知ってもらうのには役立ちますね。雑談力にもつながります。
そして本書のPart3・4は実践パートになっていて、ものすごく簡単な単語を使って言い換えることで、英語に直しにくい言葉を説明する練習をします。
遊び感覚で、「こういうことがあったら自分はこう感じるだろうな」ということを想像して、自分のわかる単語で表現すればいいわけです。
英会話スクールなどでなかなか言葉が出ない人などにとっては、本書のメソッドは状況打開に非常に有効だと思いますね。
それともう一つ印象に残ったのはこの一節。
皆さん、「日常会話から学びます!」っておっしゃるんですが、それが挫折の原因なんですよね・・・。
(「青木ゆか×ほしのゆみ 対談」より)
日常会話というのは恐ろしく広いので、英会話を身に付けるには遠回りしていることになるそうです。
ビジネス英会話教材「ビジネス英語 話す筋トレ」の松尾光治さんもまったく同じことを言っていたのを思い出したので、印象に残りました。
日常英会話フレーズを覚えることはもちろん有効な学習法です。
しかしフレーズを知らなくても、本書に書かれているように知っている単語で言い換えて会話をつなげば良いので、あまり「フレーズ数」にこだわる必要はないのかもしれませんね。
著者・青木ゆかさんはこうも言っています。
自分が興味のある専門分野に絞って学んで、それを応用していくのが一番の近道なんです。
確かに。
挫折しないためのもっとも有効な対策は、自分が興味を持てることに関連付けて学ぶことなのでしょうね。
以上、「ずるいえいご」を紹介してきました。
ほしのゆみさんのあまりクセのない漫画&対話形式で解説されているので、著者の言わんとしていることがとてもわかりやすいです。
英会話を難しく考えがちな人は、読んでみてください。
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ちなみに・・・
Dr.アジのオンライン英会話講座「自力で話せる英会話【ADVANCED BEGINNER】」も、本書とおなじく「正解は一つではないから、自分の話せる言葉でどんどん会話していきましょう」的コンセプトの英会話教材です。
学習者目線に徹した解説はとても丁寧でわかりやすいのでおすすめです。
>「自力で話せる英会話 ADVANCED BEGINNER ビデオ講座」のレビュー