英会話ぜったい音読の外観

英語書籍教材の紹介が続きます。

今回は、有名な「英会話・ぜったい音読」シリーズから、「挑戦編」をレビューします。

 

「ぜったい音読」シリーズの中では上級者向けになります。

 

では内容を見ていきましょう。

教材著者の紹介

◆編者:國弘 正雄(くにひろ まさお)さん

國弘 正雄さん 略歴
東京生まれ。
”同時通訳の神様”として知られる。
NHK教育テレビ講師、文化放送「百万人の英語」講師、東京国際大学教授、日本テレビニュースキャスター、参議院議員などを歴任。
英国エジンバラ大学特任客員教授。
著書多数。

 

◆トレーニング指導:千田 潤一(ちだ じゅんいち)さん

千田 潤一さん 略歴
岩手生まれ。
福島大学卒。
タイム・ライフ、AIU保険会社等を経て、現在、(株)アイ・シー・シー代表取締役。
著書に「TOEIC TEST英語学習ダイアリー」、「TOEICテストトレーニングブック」シリーズ、「この1冊ですべてが解るTOEICテスト」等多数。
2003年5月より、文部科学省の「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」を受けた、都道府県教育委員会による英語教員研修の講師を務める。

(以上 本書カバー裏より抜粋)

教材の概要

英会話・ぜったい・音読 【挑戦編】―英語の上級回路を作る本


本書の基本情報を書いておきます。

教材基本情報
「英会話・ぜったい音読 挑戦編」
発行:講談社
2001年7月19日 第1刷発行
(レビューに使ったのは2010年発行の第9刷)
標準学習時間:1時間/日
標準学習期間:3ヶ月

英会話ぜったい音読教材一式

 

◆本体(テキスト)

ほぼB6サイズ、142ページ。

 

◆CD

1枚付属。

本書の音読素材の朗読音声を収録。

46トラック、44分。

学習内容の詳細

本書は、タイトルからわかるように、みっちりと音読をして「英語の上級回路作りをする」教材です。

 

音読素材としては、日常英会話の単発フレーズ等ではなく、まとまった長さの記事が使われています。

トレーニングを始める前に

実践編に入る前に、音読とは何か、どんな効用をもたらすかについて、詳しい解説が書かれています。

「最上級」英語への挑戦(國弘氏)

  • 國弘氏は、かつてNHKの「トークショー」という番組で、元アメリカ副大統領のヒューバート・H・ハンフリー氏、駐日大使エドウィン・ライシャワー氏、核物理学者ハーマン・カーン博士他と対談をしたこともある。それほどまでに英会話力を高める基礎となったのは、中学以来実践していた「音読」と「筆写」だった。
  • 同氏は、英語講演を頼まれたときは、そのテーマに関連のある英文を事前に繰り返し音読する
  • 音読のほうが、黙読よりも脳を活性化させることが、東北大学・川島隆太博士により明らかにされており、音読の効果は科学的に裏付けられている。
  • 発音や語法・用法の面だけでなく、外国の政治・経済・地理・歴史などにも興味を持って英語学習をしてほしい。

 

英語習得の王道は「音読」(國弘氏)

  • TOEFLスコアで日本はアジア21カ国中18位という低いランク(2001年当時)。このように英語力が低いのは取り組み方が悪いから
  • 動物の中では比較的知能の高いチンパンジーであっても、ヒトのもつ「声を出して意思疎通をする」能力は持っていない。文字(視覚)での学習も重要だが、音声による練習もヒトの言語能力にとっては本質的であり不可欠なものである。
  • ヒトの脳のしくみとして、他人の話したことばを理解する際に働くヴェルニッケ中枢と、自分がことばを発する際に作用するブローカ中枢があり、メッセージがそれら2つの中枢を循環することで、言語が能動的に使える知識として身体の中にたたきこまれていく(「内在化していく」)。そのような循環が行われる環境を作り出す作業が「音読」である。
  • 音読は英語を理解するための基礎回路。建築に例えれば基礎工事。または「種火」のようなもの。音読によって「種火」をつけることができれば、後は燃料(単語やイディオム)を与えれば与えるだけ英語力が伸びる。
  • 音読素材としては、簡単な会話文よりも、まとまった意味をもつ文章が良い。
  • 黙読して内容が理解できる文章を音読することが原則。中学3年までに習う語彙でできた文章を音読して、自由に使いこなせるようになれば、実際の場面でも力を発揮できる。
  • 只管朗読」すなわちただひたすら声を出して読む。やればやるほど効果は上がる。問題は飽きてくること。そこで、1つの教材で1~2ヶ月を目標とすること。
  • 暗記しなくて良い。
  • 只管筆写」もおすすめ。手を動かして書き写すことで英語を内在化させる。
  • 國弘氏は、教材が豊富ではなかった戦後に、身近にあったリーダー、参考書を何度も何度も声を出して読んだり、筆写したりした。いまでも音読を怠らない。その効果は絶大なのでだまされたと思ってやってみること。

 

英語トレーニングの心構え(千田氏)

 

  • 自分のレベルに合った素材でトレーニングをすること。本書はTOEIC600点以上の人を想定。
  • 本書は3ヶ月が目安。毎日やることが原則。
  • 記録をつけることが続ける秘訣。
  • TOEICを受験して効果測定をすること。
  • 一緒に実践する仲間を作ると良い。
  • 基本トレーニング:CD、テキストを使いながら音読、音読筆写、シャドーイング。
  • 応用トレーニング:ディクテーション、暗唱。

 

実践編

高校英語の教科書から抜粋された文章が素材となっています。

 

LESSON1 The Eurailpass(188語)

LESSON2 So Many Countries, So Many Maps(265語)

LESSON3 The Soybean Road(428語)

LESSON4 "Don't Work Too Hard."(422語)

LESSON5 Freedom and Equality in the American Family(525語)

LESSON6 Tales from Tsurezuregusa(572語)

LESSON7 The World and You(603語)

LESSON8 Do Your Best While You Can(791語)

LESSON9 Computers Catch Cold(778語)

LESSON10 Bikini(560語)

 

ちょっとわかりにくいですが、社会、文化、コミュニケーション、歴史などをテーマにした文章が音読素材として使われています。

 

実際に存在する地名、人物名などはなじみのないものもありますが、大半は日常よく使われる単語を使って書かれた文章になっています。

ですから単語がむずかしくて音読がまったく進まないという心配はないでしょう。

 

実践編のテキストは下の写真のようなレイアウトです。

英会話ぜったい音読のテキスト

スクリプト全体が掲載されていますが、和訳はありません。

 

そのかわり、語注が充実しています。

発音記号まで書かれているのは素晴らしいですね。

 

CDの朗読音声は、当然ネイティブ話者が担当しています。

 

本書タイトルは「挑戦編」ですが、1000時間ヒアリングマラソンのような上級者(英語のプロ)向け素材ではありません。

 

いくつかの文章で朗読スピードを計算してみましたが、110~140ワード/分程度です。

TOEICのリスニングパートが150ワード/分、ネイティブが200ワード/分程度であることを考えれば、本書はかなりゆっくりな部類に入ります。

トレーニング・アシスト①~⑧

コラム。

音読によって得られるもの、音読筆写で効果が出る理由、音読で英語力を伸ばした人の体験談などです。

 

本書の内容は以上です。

良い点/イマイチな点

  • (良い点)音読素材としての文章は少し少ないかなと感じなくもないですが、音読の取り組み方、進め方がしっかり具体的に解説されている点が良いです。「音読しましょう」といって文章だけ大量に渡されるような教材だとサギですが、本書はトレーニングの解説が充実しています。
  • (イマイチな点)英文スクリプトはあるけど和訳がない点が不満に感じる人もいるかもしれません。(個人的には詳しい語注がついていて、文の意味はわかるのであまり問題ではないと思います)

 

向いている人・向いていない人

  • TOEIC600点程度の人が本書対象者です。完全初心者であれば「入門編」からやりましょう。
  • 高校の教科書の文章が素材なので、中学生の方であれば、辞書で単語を調べたりして文章をしっかり理解してから音読に取り組みましょう。
  • 音読できる環境のない人は本書を実践できません。

 

総評

「英会話・ぜったい音読 挑戦編」の総合評価・・・評価A(優れている教材)

 

瞬間英作文」シリーズの著者・森沢洋介氏が「英語上達完全マップ」の中で音読用おすすめ教材として挙げているのがこの「英会話・ぜったい音読 挑戦編」です。森沢氏は、

國弘氏の解説を熟読されたし。

とも書いています。そんなわけでこの「英会話・ぜったい音読」シリーズは非常に高く支持されている教材です。

 

本書の中で特に大切な点は、まず

  • 「意味の分かった」英文をひたすら音読・筆写する

 

これですね。

「語句や文法を調べながら音読する」のは禁物ということです。

 

次に

  • CDを必ず聞いて正しい発音やリズムで音読する

 

これも大切です。

繰り返し音読練習した結果、間違った発音を覚えてしまうのは悲しいですよね。

 

上記2点は、他の教材で音読するときも気をつけていただきたいポイントです。

 

そして、何よりも

  • 続ける

 

これが一番むずかしいですね。

 

繰り返し同じ文章を読むことが退屈に感じるときもあるでしょう。

そのとき、音読の効果を信じて、やりぬくことができるかどうかが分け目です。

 

本書ではさまざまな観点から音読の絶大な効果が解説されているので、ときどき解説部分を読むとモチベーションが上がります。

 

また、マンネリ防止策として、音読トレーニング教材「みるみる英語力がアップする音読パッケージトレーニング」も入手して、交互にトレーニングするのも良いかもしれません。

 

「音読パッケージトレーニング」は、TOEICスコア300~500台の人が対象者なので、本書の対象者にとっては少し簡単に感じるかもしれません。

そのかわり、読む素材として「物語」「ジョーク集」「小説」など、本書と別ジャンルのものが使われているので、交互に読めば気分転換にもなって良いのではないでしょうか。

 

「英会話・ぜったい 音読 挑戦編」のレビューでした。

 

英会話・ぜったい・音読 【挑戦編】―英語の上級回路を作る本

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