今回も森沢洋介氏の「瞬間英作文」シリーズから、「ポンポン話すための瞬間英作文パターン・プラクティス」を紹介します。
それではいつもの流れでレビューしていきます。
Contents
教材制作者・森沢洋介さんとは?
森沢洋介さんを紹介するのは4度目になりますが、改めて略歴紹介します。
■森沢洋介さん
英語学習雑誌に必ずと言っていいほど登場する人。
著書「瞬間英作文」シリーズは非常に有名。
1958年神戸生まれ。青山学院大学フランス文学科中退。
大学入学後、独自のメソッドで、日本から出ることなく英語を覚える。アイルランドで旅行業に従事した経験あり。
TOEIC985点。
現在は千葉県で「六ツ野英語教室」を主催。
英語上達完全マップ Webサイトhttp://mutuno.o.oo7.jp/
教材のコンセプト
簡単な日本文を大量かつスピーディーに英文に直す「瞬間英作文」トレーニングは、学習者の体内に英作文回路を作るのに非常に効果的です。
しかし学習者によっては、日本語に邪魔されて、本来の目的である「英語の基本文型へのアクセス・文型操作」に集中できない場合があります。
そこで、古くからある英語学習メソッド「パターン・プラクティス」を導入することで、日本語の影響を最小にして文型アクセス/操作に集中し、英作文回路の強化に効果を上げることができる!
というのが本教材のコンセプトです。
教材の概要
本教材は瞬間英作文教材の前2作「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」「スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング」に続いて製作されたものであり、教材構成も似た形になっています。
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書籍(テキスト)
ほぼB6サイズ 181ページ
CD 2枚付属
DISC1:77分
DISC2:77分52秒
教材の詳細
まず瞬間英作文とは?
瞬間英作文トレーニングは、簡単な英文を日本語から大量にスピーディーに作るワークを通して、英語の文型にアクセスし文型を操作する能力すなわち「英作文回路」を作るトレーニングです。
先ほども紹介した「どんどん話すための~」、「スラスラ話すための~」は、まるまる一つの日本文を英文に直すトレーニングですが、今回の教材では、「パターン・プラクティス」というメソッドを導入します。
パターン・プラクティスとは?
「パターン・プラクティス」は、元になるセンテンスの一部のみを変えて、次々と無数の文を作っていく練習です。
例えば、引き金文(元になる文)が
I go to the library.
と与えられていたとして、
「彼は」というキュー(変化させる部分)が与えられたとすると、
He goes to the library.
というふうに引き金文を変化させて新たな文を作ります。
次に、
「昨日」というキューが与えられたら、
He went to the library yesterday.
という文を作ります。(副詞としてyesterdayが加わるとともに時制が過去になるためgo→wentとなる)
パターン・プラクティスを採り入れるメリットは?
フルセンテンスを英訳する瞬間英作文では、日本語で書かれた文の意味を把握し、それを英語で表現するための文型を選び、英文を作るという作業をします。
ところが学習者によってはこの「日本語文の意味を把握する」過程で、日本語に振り回される場合があります。また、文型を操作する感覚が得られず、単に文を暗記してしまう場合もあります。
いずれにしても、トレーニングの本来の目的である「英語文型へのアクセスと操作」に集中できないのが問題です。
そこで「パターンプラクティス」を導入すると、キューの部分だけ日本語とお付き合いをすれば次の文が作れるので、「文型アクセス&操作」のトレーニングにエネルギーを注げるようになる・・・というのがこの教材のもくろみです。
本書の構成
・基礎編 p.29~p.112
基礎編では先に書いたように、引き金文の一部を、日本語で与えられるキューで置き換えていく練習をします。
たとえば
<引き金文>「私は高校生です」
→I am a high school student.
<キュー>「彼女は ですか?」
→Is she a high school student?
<キュー>「あなたは 大学生」
→Are you a college student?
のように次々と文を作る練習です。(※語句は本書の内容から変えています。)
<キュー>の与え方はランダムなので、「瞬間英作文シャッフルトレーニング」に近い練習になります。
・発展編 p.113~p.181
発展編では、ページごとにパターンが決められた問題になっています。
たとえばp.114~p.115では「能動態の文を受動態に直す」問題、p.122~p.123では「must、can't、may」を使う問題など、文型ごとに配列された問題になっています。
使われる語句は基本的に中学レベル(の中でも簡単な単語)に制限されています。
実際にはちょっと難しい単語や、候補がいくつかあってどの単語を使えばいいか迷いそうなところもあるのですが、その場合は問題文の中で語句が指定されているので、そこで悩む必要はありません。
ですからどんどん英文を作っていくことができます。
CDは、日本文(問題文)→ポーズ→英文(解答)の順で流れてくるので、ポーズの時間内に答えるように練習します。
ただしこれはいきなりやろうとすると難しいので、ある程度テキストでの練習を繰り返してからCDでのトレーニングをするように推奨されています。
「ポンポン話すための瞬間英作文 パターン・プラクティス」の評価
教材コンセプト/メソッドは明確か
評価:◯
パターンプラクティスという既存のメソッドなのでオリジナリティはないわけです。
とはいえ、英作文回路を作るトレーニングという明確なコンセプトには沿っているし、森沢氏が主催する英語教室で良好な効果があったとのことなので、◯としました。
アウトプットは十分か
評価:◎
ほとんど全てがアウトプットパートです。
バカらしいほど簡単な語彙・表現しかないので、目でテキストを読んだりCDを聞き流したりしても「学習したつもり」にならない(なれない)というメリット(?)があります。
クオリティ、使いやすさは十分か
評価:◯
テキストの見やすさ、CDの音質等、問題ありません。
本にCDを入れたままだと本を開きにくいですが、取り出せばいいだけなので大きな問題ではないですね。
最後まで学習を続けられるか
評価:△
これは、少し微妙と感じました。
このトレーニング、どの段階でどこまでやればいいのかが、学習者には分かりにくいかなと思います。
フル英作文型の瞬間英作文より学習負荷が明らかに低い(易しい)のなら、パターンプラクティスをささっとやった後フル英作文に進めば良いと思いますが、そんなに簡単な印象は受けません。
フル英作文型の瞬間英作文トレーニングの前段階教材という位置づけだとしたら、もっとボリュームを絞ってもよかったかも、と思います。
メリット/デメリット、向いている/いない人
■デメリット
・前2作の瞬間英作文教材と同じく、実際の生活で使いそうにない文を使うため、実戦的な会話表現を身につけたい人にとっては回り道をしているように感じる。
■メリット
・フル英作文型の瞬間英作文とは異なる負荷をかけたトレーニングをすることで、応用力、文型アクセス能力の向上が期待できる。
■向いていない人
・中学レベルの文型・語彙が出来ていない人。
・自然な(ネイティブ的な)会話表現を学ぶ教材がほしい人。
■向いている人
・瞬間英作文トレーニングに少し変化をつけたい人。
・記憶力が良いために、通常の瞬間英作文トレーニングでは文を暗記してしまって成果が上がらない人。
総評・・・評価B(良い教材)
「瞬間英作文のトレーニングに取り組んでみたけど、どうも引っかかってしまって上手く出来ない」
「瞬間英作文をした結果、ある程度効果は出たものの、英文を記憶してしまうために効果が頭打ちになっている」
そんな人は、まるまる一文を英訳する瞬間英作文もやりつつ、元の文の一部を変化させるパターン・プラクティスを取り入れてみると、現状を打開できるかも知れません。
以前、当ブログで紹介した「ビジネス英語 話す筋トレ」はパターン・プラクティスのメソッドでビジネス表現を学ぶ上級者向け教材でしたが、今回の「瞬間英作文 パターン・プラクティス」は中学レベルの語彙で実践するパターン・プラクティスです。
パターン・プラクティス自体は何十年も前に開発されたメソッドであり、この教材でも、基本部分はそのオーソドックスな形式を踏襲しています。
教材の解説部分には、フル英作文の瞬間英作文で日本語に振り回されてしまう人にはパターン・プラクティスのほうが成果が出やすいときがあると書かれていますが、通常の瞬間英作文より必ずしも「易しくなる」というわけではないようです。
私も実際この本でパターン・プラクティスをやってみましたが、問題によっては、フルに英文を作るよりも手間取るときがあります。
パターン・プラクティス式では、文構造とあまり関係ない語句を英訳する手間がなくなる分は確かに負荷が減ります。一方で、元の文を一時的に記憶する必要があるんですよね…。
頭の中に記憶する作業に加えて、一部を入れ替える作業をするので、リズムよく進んでいく必要があり、それなりに大変です。
能動態のセンテンスを受動態に変えるとか、語順の変更量が多い問題では特に大変でしょう。
ということで、この「瞬間英作文 パターン・プラクティス」、前2作の(フル英作文型の)瞬間英作文トレーニングより「軽い」負荷というよりは、「異なる」負荷を頭脳に与えるためのバリエーション練習と考えるのが良いと思います。
英作文回路を作るという大きな目的は同じなので、フル英作文型トレーニングと並行して取り組むのがいいのではないでしょうか。(気分転換にもなるでしょう)
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