今回は、英語書籍教材「毎日の日本 英語で話す!まるごとJAPAN」を紹介します。
少し前にレビューした「毎日の英文法」と同じジェームズ・M・バーダマン氏の著書です。
それではレビューしていきましょう。
Contents
教材著者の紹介
著者 James M. Vardaman(ジェームズ・M・バーダマン)さん 略歴
1947年、アメリカ、テネシー生まれ。
ハワイ大学アジア研究専攻、修士。
早稲田大学文化構想学部教授。
「アメリカ黒人の歴史」「ロックを生んだアメリカ南部 ルーツミュージックの文化的背景」など著書多数。
(本書カバーより)
教材の概要
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教材の基本情報は以下のとおりです。
◆書籍タイトル:
「毎日の日本 英語で話す!まるごとJAPAN」
ほぼB6サイズ、181ページ
朝日新聞出版
2015年3月30日 第1刷発行
1,300円+税
◆本書中の英文朗読音声
朝日新聞出版ウェブサイトよりダウンロード可能。
MP3形式/72ファイル/52.5Mバイト/1時間55分。
学習内容の詳細
本書はざっくり言うと、海外でよく聞かれる「日本のこと」を説明するためのカンニングペーパー的な教材です。
本書の内容は以下のとおりです。
本書の効用
ポイントを抜粋すると:
- 著者バーダマン氏が、イタリアで、世界中から集まった学生に日本のことについて講義をしたとき、日本の学生は自国のことを説明するのがもっとも不得手だった。また、何かの発表をする際にも、他国の学生が堂々と、しかもウィットに富んだ表現をするのに比べて、日本の学生はなんとも頼りなく、子供っぽい印象だった。
- 日本から海外への留学生が共通して言う言葉は「もっと日本のことを勉強してから行けばよかった」である。
- 海外でのコミュニケーションでは、日本人は必ず日本のことを紹介しなければならない場面を経験する。
- 海外では、日本と異なり、あたりまえと思うことであっても言葉を尽くして説明することが求められる。
- 本書は、海外で日本のことを説明するための「はじめの一歩」の材料として活用してもらうことを考えて作った。
トレーニング・メニュー
本書を使って、実際に日本のことを説明するスキルを身に付けるための具体的なトレーニング手順が解説されています。
Chapter1 日本のこころ
ここから実際の説明文章になります。
Chapter1では以下のような話題を扱います。(番号は話題の通し番号)
01 お茶
02 武士道
03 侘び・寂び
他 全12の話題
テキストは、下の写真のように見開きで1つの話題が掲載されており、左ページが英文、右ページが日本語訳。語注がないので英文と日本語訳を対応させて理解していきます。(英文と日本語訳とで対応する重要語は色つき文字で書かれています。)
Chapter2 日本の食
13 出汁(だし)
14 日本酒
15 米
他 全16の話題
Chapter3 日本の伝統文化
29 歌舞伎
30 能・狂言
31 文楽・盆栽
他 全6の話題
Chapter4 日本の文化
35 侍
36 忍者
37 芸者
他 全16の話題
Chapter5 日本の社会
51 交通システム
52 交番・コンビニ
53 自動販売機
他 全12の話題
Chapter6 海外の方に人気の観光地ベスト10
63 伊勢神宮・出雲大社
64 日光東照宮
65 築地
他 全10の話題
一つの話題はそれぞれ200ワード前後です。
学習内容は以上になります。
良い点、イマイチな点
・単に文章素材が与えられているだけでなく、それを使って音読や暗唱をするための手順が示されている点が良いです。
・芸術・文化・料理など、日常生活からは少し離れた格調高いテーマが多い印象です。海外で聞かれるのがそういう方面であるのなら確かに有用ですが、もう少し現代日本の日常のテーマが多くても良かったかもしれません。具体的に言うと「相撲」が取り上げられているが「プロ野球」「Jリーグ」などが取り上げられていない等。また、「少子化」「過重労働」など社会的な問題についての話題は取り上げられていません。まぁネガティブな話題は(聞かれない限り)あまり海外で話さないほうがいいかもしれません。
向いている人・向いていない人
・海外に行く予定が決まっている人にとっては、本書が役立つでしょう。また、東京オリンピックに向けて通訳ボランティアなどしたいと考えている人にも有効だと思います。
・「音読の練習をしようと思っているが、覚える価値のある文章を使って練習したい(どうでもいい文章を何度も読むのは苦痛)」という人にとっては、格好の音読素材となるでしょう。まるまる覚えてしまえば海外の人と話をするときのネタになります。
総評
「毎日の日本 英語で話す!まるごとJAPAN」の総合評価・・・評価B(良い教材)
「外国人に日本のことを英語で紹介する」系の教材はけっこう見かけますが、なかなか難しいテーマだと思います。
相手のバックグラウンド、知識にもよるし、相手が興味を持っていることにうまくミートする話をするのは簡単なことではないでしょう。
日本人相手に日本語で説明することだって、いきなり上手にできることではないですよね。
それに、詳しく説明しようと思ったらキリがないので、自分が特別興味を持っている分野以外には手が回らなくなるでしょう。
この種の「外国人に英語で日本を説明する」系教材で学習するなら、「いかなる相手・状況に対しても完璧に説明ができる」ことを目指すのは現実的ではなく、「概要」が伝えられればいいぐらいに考えるのが妥当かなと思います。
さて、本書の良い点は、日本を紹介する文章のお手本が示されているとともに、その文章を使った音読やシャドーイング、暗唱を通して発話力を高められるようになっている点です。
話題が異なっても文章量(ワード数)がだいたい同じ程度にまとめられているので、音読練習などをしながら広く浅く日本のことについての知識を習得していくことができるでしょう。
また、普段使わないような語彙を知ることができるのも良い点ですね。
例えば、最初の話題は「お茶」ですが、下のような単語が出てきます。
brew (お茶を)淹れる
Zen Buddhism 禅宗
calligraphy 書道
こういう語句は、日常英会話教材では出てきませんね。
お茶という話題に関連付けてこういう単語を覚えていけるのが本書のメリットです。
ということで、「毎日の日本」ですが、この種の本の中ではボリュームが少なめなので、「とりあえず」の日本説明教材として使ってみても良いと思います。
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