これまでずっとネット通販の教材についてレビューしてきましたが、ここからは一般書籍教材についても紹介していきます。今回は森沢洋介さんの「英語上達完全マップ」です。
一般書籍教材とは、本屋さんで買える教材という意味です。
本屋さんにはたくさんの英語学習本がありますが、結局のところ魔法の教材は、ありません。英会話習得のために必要なのは大量の音読、リピーティング、瞬間英作文など、努力と時間を要するものであることには変わりがありません。
むしろ古くからある有名書籍・参考書は、現代でも使える優良教材と言われることが多いです。
最近はやたら目を引くタイトルの本が多いので、魅惑的なタイトルに騙されて中身のない本を手に取ってしまう人もいると思います。楽な方法を探す時間があったら、着実な学習方法、教材を選んで実践するほうが良いです。
今回紹介する森沢洋介さんの「英語上達完全マップ」は、トンデモノウハウではありません。現実的なマインド論や、具体的実践内容、使用教材を含めた英語学習の全体像を示してくれる本です。
Contents
教材執筆者 森沢洋介さんとは?
英語学習雑誌に必ずと言っていいほど登場する人。
著書「瞬間英作文」シリーズは非常に有名。
1958年神戸生まれ。青山学院大学フランス文学科中退。
大学入学後、独自のメソッドで、日本から出ることなく英語を覚える。アイルランドで旅行業に従事した経験あり。TOEIC985点。
現在は千葉県で「六ツ野英語教室」を主催。
英語上達完全マップ Webサイト
http://mutuno.o.oo7.jp/
教材の概要
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書籍教材・295ページ。
完全な学習ノウハウ本であり、この本の中にはレッスンやテストはありません。CD等もありません。
日本で普通に(幼少期に海外で暮らしたりせず)育った日本人が、目安としてTOEIC900点前後までの英語力を身につける方法と推奨教材について書かれています。
音読と瞬間英作文を中心とした独学で英語を身につけた著者自身の経験から、「英語はあるレベルまでは英会話スクールに通ったり留学したりせずとも独学で身につけられる」という考えに基づいて、基礎的レベルからの着実な積み重ねで英語を学んでいく具体的プロセスが説明されている本です。
私が本ブログの「教材の選び方」カテゴリで書いている記事は、この本を読んで私が共感した部分をネタにしているものが多いです。
それでは教材の内容を見ていきます。
第1章 英語習得の戦略
第1章は、英語学習とはどういうものと捉えるか、そしてどう取り組むか、について書かれています。
「楽しみながら学習しよう!」とか、そういう類の軽薄なマインド論ではなく、そもそも外国語を習得するとはどんなことなのか、やるべきことは何かについて、極めて現実的な指針が示されています。
具体的には、下記のような内容です。
・日本語を覚えたのと同じように(苦労せずに)英語を身につけることが出来ない理由
・やみくもに海外に行っても英語が上手くならない事実(著者の体験談)とその理由
・海外に行く前に到達しておくべき英語レベルとTOEICスコア
・努力せず短期間で英語をマスターする秘策はないという事実
・日本にいながらにして英語が上達する人がしていること
・中学高校で英語を勉強したのに話せないという挫折感に対する客観的な現実認識
・英語力をつけるためのきわめて単純な基本法則と、それを効率的に実践するポイント
第1章後半では、英語力というものは具体的にどんなスキルなのか、そしてどういった目安でレベル分けされるかについての解説と、英語テスト、特にTOEICについての解説がされています。
「英語力とTOEICスコアは実際のところ相関があるのか?」というしばしば耳にする議論に対して、森沢氏は「英語の基底能力」という言葉を使ってTOEICと英語力との関係をわかりやすく説明しています。
第2章 英語トレーニング法
第2章では、効率的に英語を身につけるための下記トレーニングが紹介されています。
1.音読パッケージ
2.短文暗唱=瞬間英作文
3.文法
4.精読
5.多読
6.語彙増強=ボキャビル
7.リスニングトレーニング
8.会話
「音読パッケージ」「瞬間英作文」「ボキャビル」など森沢氏の造語ですが、それらの内容、効果、教材の選び方などがくわしく具体的に解説されています。
第3章 トレーニングの進め方
第3章では、第2章で紹介された各トレーニングを、どのように組み合わせて学習を進めていくかが説明されています。
1.標準プラン
2.目的・目標レベル別プラン
・突然英語が必要になった人用プラン
・海外旅行を楽しみたい人用プラン
・読むことに特化したい人用プラン
3.森沢氏が指導した人たちのトレーニング実例紹介 3例
第4章 トレーニングを継続するために
英語学習を継続し、効果を上げていくための気持ちの持ち方、取り組み方について、著者自身の経験からアドバイスしています。
具体的には以下のような内容です。
・外国語を学ぶのに避けて通れないものは何か、そしてそれをいかに飼い慣らすか
・初心者が挫折する原因とその回避方法
・学習の負担が減る、あるいは快適になる方法
・独学の孤独感、閉塞感を解決する方法
第5章 お勧め教材
第2章で解説されているトレーニングの種類ごとに、推奨教材が挙げられています。
森沢氏が自身の英語教室でテキストとして使い、大きな効果を上げた実績のあるものも含まれています。
「英語上達完全マップ」の内容は以上です。
「英語上達完全マップ」の評価
[check color="blue"]教材のコンセプト、メソッドが明確か?[/check]英語習得に対する森沢氏の考え方が明確に説明されています。
特に、森沢氏の勧める学習法で
・到達できるレベル
・そこまでに必要な学習量
・自分のレベルを測る目安
が詳細に解説されていることが良いと思います。
「TOEICスコアが○○くらいで、
△△はできるけど□□はまだ出来ないレベルの人は、✳︎✳︎をすれば、☆☆のレベルに到達できる」という風に、学習者のレベルに対応した具体的な学習プランを提示してくれているのがポイントです。
英会話教材の広告にありがちな、根拠のない「○○日でネイティブ並みの会話力を〜」のような怪しげな文句よりもよほど信頼できます。
[check color="blue"]読む価値がある本か?[/check]
読む価値のある本です。
本書そのものにはレッスン等が収録されていませんが、英語習得を現実的な目標として認識し直すきっかけになります。
また、中身のない英語教材、メソッドをなんとなく見分けられるようになるでしょう。
[check color="blue"]実践できる内容か?[/check]
誰でも実践できるかというと難しい部分もあります。
というのは単調かつ大量の反復トレーニングが前提になっているからです。
森沢氏のように英語習得に費やせる時間が豊富にあり、なおかつ一人で音読や瞬間英作文、精読をすることそのものに楽しみを感じられる人であればまるまる実践可能ですが、そういう環境にいる人はあまり多くないかもしれません。
しかし本書で書かれている学習プランはあくまで理想の学習量であり、そのとおりにしないとまったく効果が上がらないということはないと思います。
重要なのは、魔法のような教材やメソッドを探すのをやめて自分のレベルに見合った適切なトレーニングを積み上げていけば、スピードの差はあっても必ず効果が出るということです。
第3章には森沢氏が実際に指導した人のトレーニング過程とTOEICスコアの変化について事例が挙げられています。経緯が詳しく書かれており、参考になる部分が多いです。
メリット/デメリット考察
■デメリット
・音読、瞬間英作文など声を出して話す練習を重視する学習体系だが、発音のトレーニングに関する解説がない。
■メリット
・英語の「基底能力」と「駆使能力」という説明は分かりやすい。
・「○○日でペラペラに~」といった誇張がなく、本書を実践することで到達できる限界についても書かれており、信頼できる。
・第1章のTOEICスコアと英語力についての森沢氏の考察はわかりやすく、説得力がある。
総評・・・評価A+(特に優れている教材)
「英語を身につけたいけど何からやっていいかわからない」
「付け焼き刃でなく、体系的に、継続的に英語力を上げていく学習方法はないだろうか」
「解答テクニックに走らずTOEICスコアを上げていくにはどんなトレーニングが必要なんだろうか」
このような疑問を持っている方には、本書「英語上達完全マップ」を読むことを強くおすすめします。
本書を読むことで、
・英語力とはどういうものか
・英語が上達していく過程で、どんなことができるようになるのか
・不要な(ときには有害な)練習、教材とはどんなものか
・独学、留学、英会話スクールなどの学習環境はどうやって選ぶのが適切か。また効果を上げるにはどうすればよいか
・学習を継続していくコツは何か
といった方法論を体系的に理解することができます。
森沢氏の推奨学習プランは大量反復、大量アウトプットが前提になっています。時間に余裕のない人には実践するのが難しいかもしれません。
しかし、なぜそれだけの学習量が必要なのか、根拠も解説されています。あとは「どうすれば練習のための時間を作り出せるか」だけです。
「真面目に練習しているのに上達が伸び悩んでいる」
と感じている人も、この本を読めば自分に必要なものが見えてくる可能性が高いので、ぜひ読んでみてください。
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