この記事では、英語教材「ハートで感じる英文法」のレビューを書いています。
本書はどんな本かというと、
本書は2005年7月~9月に放送され、ご好評いただいたテレビ番組、NHK「3ヶ月トピック英会話 ハートで感じる英文法」テキスト完全版です。
「はじめに」より
このブログを書いている私は番組を見たことがなかったのですが、かなりの人気を博していたようです。
Contents
- 1 教材の概要
- 2 学習内容の詳細
- 2.1 Lesson1 「イメージでつかむ」前置詞の世界
- 2.2 Lesson2 theは「1つに決まる」
- 2.3 Lesson3 「導く」thatのキモチ
- 2.4 Lesson4 「迫ってくる」現在完了
- 2.5 Lesson5 「躍動する」進行形
- 2.6 Lesson6 すべての-ingは躍動する
- 2.7 Lesson7 未来形なんてない
- 2.8 Lesson8 助動詞のDNA
- 2.9 Lesson9 過去形が「過去じゃない」とき
- 2.10 Lesson 10 仮定法を乗り越えろ
- 2.11 Lesson 11 英単語もイメージだ
- 2.12 Lesson 12 「文の形」にも感覚がある
- 2.13 おまけ+α 重要基本イメージ集
- 3 「ハートで感じる英文法」の評価
- 4 「ハートで感じる英文法」イマイチな点
- 5 向いていない人
- 6 総評
教材著者の紹介
教材著者は、大西泰斗さん/ポール・マクベイさん。
「一億人の英文法」の著者でもある。
教材の概要
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◆ハートで感じる英文法
A5サイズ、223ページ。
2006年第1刷発行。
私が入手したのは2014年の第24刷。
あまり教材という感じのしない、親しみやすい外観です。
学習内容の詳細
本書がどんな教材かというと、いわゆる文法書のように英語表現をルールによって分類するのではなく、その表現を使うときに話し手が持っている「気持ち」、「感覚」、「印象」をイメージでつかむことを目的とした教材です。
例えば、「現在完了」とは何?というのを説明するのに、従来の文法学習では
「現在完了形は、
- 完了
- 経験
- 継続
- 結果
のどれかを表すときに使う。」
みたいな学習法になっていましたが、こういう覚え方では過去形や現在形と完了形を使い分ける方法が分からない!だからいつまでも正しく使えるようにならない!
そこで、ネイティブが完了形で話すときにどんな気持ちを持っているか、何を感じているか?という観点から完了形の使い方を学ぼうという、というのが本書のアプローチです。
本書はLesson1-12まで収録されており、各Lesson最後には最終確認テストがあります。
各レッスンの概略は以下です。
Lesson1 「イメージでつかむ」前置詞の世界
「ON」を例にとって、前置詞を文字面や用法ではなく「感覚」「イメージ」で理解する考え方が解説されています。
たとえば「ON」を「~の上に」と日本語訳で覚えたり、「場所を表す」と用法で覚えていても、他の前置詞との使い分けができません。
本来の「ON」のイメージはどんなものかを、20個の例文をとおしてつかんでいきます。
Lesson2 theは「1つに決まる」
定冠詞「the」を、「すでに現れたものに言及する」「その場にあるものに言及する」「唯一のものに言及する」・・・というように「用法」で定義しようとしても破綻します。
「the」が使われるすべての場合に共通するのはどんなイメージか?逆に「a」はどんなときに使われるのか?
Lesson3 「導く」thatのキモチ
いろいろな用法で使われている(ように見える)thatを単純なイメージに統合することを学びます。
「指示代名詞」「関係代名詞」などたいてい難しそうな文法用語を伴って説明される「that」ですが、ネイティブ話者はどんな気持ちで「that」を使っているか?を学びます。
Lesson4 「迫ってくる」現在完了
上述したように、完了形が使われるときの話者の「気持ち」「感覚」の観点から完了形を学びます。
Lesson5 「躍動する」進行形
「~する、が現在形。~している、が進行形」という理解のままでは、「私は車を持っている」というときに"having"としてはダメな理由が説明できません。
また、同じ"have"でも進行形で使う場合があります。
ではそもそも進行形とはどういうときに使うのか?を学びます。
Lesson6 すべての-ingは躍動する
「動名詞」「現在分詞」といった文法用語で説明される、動詞の-ing形について、「躍動感」という考え方で解説されています
-ing形とto不定詞それぞれが与えるイメージの違いの解説もあります。
Lesson7 未来形なんてない
未来のことを表現すると従来は習っていた「will」や「be going to」について、それぞれのニュアンスの違いを学びます。
また、ネイティブが未来のことを言うときに使う他の表現についても学びます。
Lesson8 助動詞のDNA
must、may、will、canの4つの助動詞について、それぞれ話し手がどんな「主観」を持っているか、比べながら学んでいきます。
Lesson9 過去形が「過去じゃない」とき
英語で過去形は、過去のことを話すとき以外にも使われます。ていねいさ、控えめな感じ、断定を避ける場合など。
これらの場合に共通する話し手側の「感覚」「意識」について解説されています。
Lesson 10 仮定法を乗り越えろ
文法規則の中でも難しい「仮定法」について、イメージでとらえる考え方を、前Lessonで出てきた過去形の使い方とも絡めて学びます。
Lesson 11 英単語もイメージだ
例えば「見る」ならsee、look、watchなど多くの単語があります。これらをどうやって覚え、使いこなすか?
イメージで単語を覚えることが書かれています。
Lesson 12 「文の形」にも感覚がある
There is ~、受動態、疑問文、文型など文の形についても、文法ルールではなく感覚とイメージで学びます。
おまけ+α 重要基本イメージ集
主要前置詞、主要限定詞、主要助動詞(下の写真)、主要文型について、イメージで違いが理解できるようにイラストを使って解説しています。
学習内容は以上です。思ったより盛りだくさんでした。
「ハートで感じる英文法」の評価
明確な教材コンセプトがあるか?
イメージで英語の基本表現を把握するというのが本書に一貫しているコンセプトです。
学習効果は得られそう?
必ずしも全員が本書を読んで「イメージで理解できた!」「すっごく分かりやすい!」と感じるとは限らないですが、文法や表現に対する新たな捉え方、視点を提供してくれる教材です。本書をきっかけに、今まで分からなかったことが分かったという経験をすることもあるでしょう
教材の学習内容は誰でも実践可能?
本書は「読むだけ」の教材ですが、「イメージで理解すること」が誰にでも実践できるとは限りません。
「ハートで感じる英文法」イマイチな点
- 「ハートで感じる英文法」だからといって、本書紙面のいたるところにハートマークがあるのはちょっとツライ・・・。
- 冠詞や助動詞などは、そもそもそんなに簡単に理解できるものではないので注意が必要。(普遍的な使い分けルールはネイティブにも説明できないと言われている)
- ちょっとクセのあるイラストは好みが分かれるかも知れません。しかし大西先生本人が本書イラストを描いているそうなので、大西先生が伝えようとしている「イメージ」が最大限に反映されている(だろう)というのは利点といえるでしょう。
向いていない人
本書は基本的に「学校でこう習ったでしょ?でも実際は違うんですよ」というスタンスで話が進むので、中学英語をひととおりやっている人でないとピンと来ないです。
総評
「ハートで感じる英文法」の総合評価・・・評価B(良い教材)
ということで有名なテレビ番組をもとにした英語教材「ハートで感じる英文法」をレビューしてきました。
「英文法」という言葉がタイトルに含まれてますが、「これを読んで文法を制覇しよう」という本ではなくて、「文法」という言葉のせいで英語を難しく考えてしまう(その結果、英語本来のニュアンスから遠ざかってしまう)悪習をなくそうという思想です。
同じ大西先生の「一億人の英文法」は、ボリュームがものすごくて読み物とは言えないし、文法書としては索引機能が弱いということで、ちょっと持て余し気味に感じたのですが、本書は適度なボリュームでプレッシャーがなく、とっつきやすい感じです。
「一億人」では例文の音読が推奨されていましたが本書はそれもなく、レッスンごとの最終確認テストがあるくらいなので、ただ読んで理解するだけです。
本書のコンセプトは、「イメージをつかみさえすれば文法など考えなくていい!」というものなのですが、イメージで理解するのがいちがいに優れた手段かというと微妙です。
イメージをつかむのが得意な人とそうでない人がいるわけで、「得意でない人」にとっては、ロジカルに考えたり、自然に理解できるまで多くの例文を読んだり、といった従来的な学習法が向いている場合もあるでしょう。
私もイメージで理解してすぐ応用できるタイプでなく、むしろ理解するのに時間がかかるほうです。
勉強していて、何かが理解できたような気がして
「あ、そういうふうに考えればいいんだ!」
と喜んだあとで、
「やっぱりそうじゃなかった・・・」
と気づいて落ち込むこととか、学生のときにはよくありました。
なので、この本に関しては、盲信的に「絶対にイメージで理解しよう!」という姿勢ではなく、「ふーん、こういうとらえ方もあるんだな」ぐらいに受け止めるのも良いと思います。個人的には一時期に読み込むより、時間をおいて何度か読むほうが理解が深まると感じています。
ちなみに本書は、イメージだけでなく言葉での解説も豊富なので、言葉の説明のほうが理解しやすいという人にもおすすめします。
特に現在形、進行形、過去形、完了形の解説はわかりやすいので、オススメです。
以上、「ハートで感じる英文法」のレビューでした。
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