この記事では、英語教材「絵で見てパッと言う英会話トレーニング 基礎編」を紹介します。
本書はちょっとユニークな教材です。
さっそくレビューしていきたいと思います。
Contents
教材著者を紹介します
英語・日本語のバイリンガルとして、英語教室 Beam International を主催。
「世界に通用するバイリンガルを育てること」をミッションに、英語に初めて触れる小学生から、ハーバードへのMBA留学をめざす社会人までを対象に幅広く英語を指導。
TOEIC990点、国連英検特A級、英検1級。
1999年台57回手塚賞にて佳作入選、同年漫画家デビュー。
2003年、「週刊少年ジャンプ」で「TATTOO HEARTS」を連載。
その後、手描き・切り絵などのアナログ作品からデジタル作品まで幅広く手がけるイラストレーターとして活動。
モットーは「ストーリーがにじみ出るようなイラスト!」。
(以上、本書巻末より抜粋編集)
教材の概要
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基本情報を書いておきます。
著者:Nobu Yamada、イラスト:Kajio
出版社:学研プラス
2011年8月 初版発行
※レビューは2016年4月28日第11刷のものを使用。
◆テキスト
B6サイズ、174ページ。
◆CD
1枚付属。20トラック。
以下、本書内容を詳しくみていきます。
学習内容の詳細
本書は、ざっくり言うと
「絵を引き金にした瞬間英作文」+「日常会話フレーズ学習」
の教材です。
「一人称視点のイラスト」からの英作文、つまり、自分が会話をしているという感覚でスピーキング練習をします。
従来の学習は、たとえばバス停で待っている人の絵を見て
Tom is waiting for the bus.
とかある意味[どうでもいいこと]を話す練習をするものだったんですね。
他人事なので気持ちがこもらないわけです。
一方、本書では、自分が会話に参加している臨場感を伴って発話練習をします。
本書では著者が
- 発話の必然性と使用実感を味わいながら英会話の練習ができます
と書いているように、機械的な「和文英訳」の作業ではなく、自分が英会話をしている感覚をつかむことができるんですね。
実際にどんな要領で練習するか見てみましょう。
本書のトレーニング:瞬発力が命
本書の右ページは、場面の説明と、イラストと、自分が言うセリフの日本文が書かれています。
イラストから状況を想像しながら、自分のセリフを英語で言う練習をします。
「瞬発力」を意識して、できるだけ速く英文をアウトプットします。
ページをめくると、左側ページには、解答例の英文と、前の右ページのイラスト、そして解説が書かれています。
解説の内容は、口語的によく使われる語句・表現の説明、細かなニュアンス、フレーズを使う際に注意すべきポイントなどです。
上記の要領で英文を作る練習を繰り返すことで、表現の基本パターンが自然と身についていく効果が得られる…というのが本書のコンセプトです。
また本書では日本語を正確に英語に訳すのが目的ではなく、状況を読み取り、流れにふさわしい表現を使って英文を作ることを狙いとします。
その意味では、適切な構文を選んで英文を作る「英語脳」を構築する森沢洋介さんの「瞬間英作文」とは少し方向性が異なっています。
どういうことかというと、本書で例えば
友達に「今日、ごはん食べに行かない?」と誘われた。
これに対して
「いいねー。」
と答える場面では、解答例は
Sounds great.
となっています。(日常会話の頻出フレーズですね)
「いいねー。」を直訳すると、
That's good.
とかになりますが、これだとあんまり乗り気ではない感じになり場面に合った表現とは言えないんですね。
Sounds great.のほうが熱意をもって同意するニュアンスが出るので、この場面にふさわしい表現になります。
ということで、本書では文法要素の習得よりも、「場面に応じた表現」を選ぶことを重視します。
どんな英文を答えればいいかわからないときはすぐに答えをみて、繰り返し練習していきます。
CDはシンプルな英文音声のみ
CDは英文のみが収録されており、特にテキストと連動させて学習させる構成にはなっていません。
あくまで発音の確認用ですね。
ただし、英文の後に空白時間が設けられているので(短めですが)、やろうと思えばリピーティング・シャドーイングの練習もできます。
シーン別に頻出表現を学習できる
本書では、以下のようなシーン別に頻出の表現がまとめられており、シーンごとによく使われる表現を関連付けて覚えられるようになっています。
- Scene1 初対面(9場面)
- Scene2 自己紹介・質問(12場面)
- Scene3 日常のあいさつ(11場面)
- Scene4 聞き返し・つなぎ(6場面)
- Scene5 英語について(7場面)
- Scene6 あいづち(7場面)
- Scene7 お礼(4場面)
- Scene8 感想(9場面)
- Scene9 ほめる(10場面)
- Scene10 気づかう(5場面)
- Scene11 依頼(7場面)
- Scene12 提案(10場面)
- Scene13 スモールトーク(9場面)
- Scene14 学校・レッスン(6場面)
- Scene15 空港で迎える(12場面)
- Scene16 観光の計画(11場面)
- Scene17 日本を案内する(28場面)
- Scene18 家を訪ねる(17場面)
- Scene19 自宅に招待する(16場面)
- Scene20 食事会・飲み会(11場面)
上の練習がメインパートになりますが、随所に
- Basic Expressions(下の写真)
- Additional Expressions
というコーナーがあり、Sceneの関連バリエーションフレーズが紹介されています。
また、
- Communication Tips
というコーナーもあり、ここでは「依頼するときの言い方」や「誘うときの言い方」など円滑にコミュニケーションするためのポイントと表現が解説されています。
巻末には、
- 超定番!会話に役立つ基本文型のまとめ
というパートがあり、本書で出てきた表現を一覧できます。
本書の内容は以上になります。
本書の良い点
本書の優れている点を考察してみます。
- 文字を引き金にせず英文を作る練習ができる
森沢洋介さんの「瞬間英作文」など、文字→英文の教材や、CD音声→英文の教材が一般的ですが、本書ではイラストから英文を作るので、従来の教材とは異なる負荷を脳に与えることができます。
特に、脳においては絵を認識するほうが文章を読むよりはるかに速く行われるので、本書で繰り返し練習することで発話能力が大きく伸びることが期待できます。
ここは従来の教材にない本書のユニークポイントです。
- 英文(解答)を考える練習ができる紙面レイアウトになっている
日本文と英文が一緒に書いてあるフレーズ学習教材が多いですが(例えばこれ)、本書のメインパートではページをめくらない限り解答の英文が見えないので、ちゃんと英文を作る練習をすることができます。
そしてめくったあとの左ページには再度イラストが載っているので、イラストを見ながら解答の英文を口ずさむ練習ができます。
スムーズに学習ができるように、シンプルながらとても良く考えられたレイアウトが素晴らしいです。
- イラストのクオリティが素晴らしい
本書はなんといってもこれ!
「絵を見てスピーキングする教材だから絵のクオリティは大切だろう」という著者・山田氏のこだわりなのかわかりませんが、教材全編にわたって洗練されたハイレベルなイラストが使われています。
「少年誌連載実績のあるプロ漫画家のイラスト付き」ってゼイタクですよね。
しかも同じ絵を使いまわさず1問1問違う絵になっていて手抜き感がありません。
すべての英語教材に、このクオリティのイラストがあったらいいのに…と思います。
- CD音声はネイティブ速度に近い
CD音声の収録形態自体には特徴はありませんが、例文音声がかなり速いスピード+短めの空白時間で流れてくるので、音読の面でも瞬発力を養成する練習ができます。
向いている人
- 従来型のフレーズ集で挫折した人
- 文字から英文を作る瞬間英作文トレーニングが飽きてきた人
総評
「絵で見てパッと言う英会話トレーニング 基礎編」の総合評価・・・A評価(優れている教材)
テキストに書かれた英文を音読したり、日本文を英文に直したりする練習は必ず必要だし、効果の上がるものですが、将来的には紙に書かれた文字からではなく、何にもない空間から英語が出てくる発話力を手に入れるのが理想です。
そのレベルの発話力に到達するのは簡単ではありませんが、本書では文字から離れて、絵から英文を生み出すトレーニングができるので、発話力の向上にかなり有効であると思っています。
文字から英文を作る通常の瞬間英作文を実践されている方は、平行して本書のトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。
また、森沢洋介さんの「瞬間英作文」では、構文構成スキル特化教材のため日常会話では使わないような文が出てくる点がネックといえばネック(※「仕様」であって教材品質ではありません)ですが、本書では頻出会話フレーズの発話に重点を置くので、すぐに使える表現を学べるものになっています。
各教材の用途を理解して使えば、相互補完的に会話力を高めることができるでしょう。
以上「絵で見てパッと言う英会話トレーニング 基礎編」のレビューをお送りしました。
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姉妹教材「海外旅行編」もあります。
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