こんにちは。

今回も、一般書籍教材から紹介します。

超低速メソッド 英語発音トレーニング」という英語教材です。

 

 

本屋で売っている発音トレーニング教材を買ったのはこれが初めてです。

さて本書は、「超低速」メソッドで発音を学ぶ教材とのことです。

なぜ、「超低速」が良いんでしょうか?

レビューしていきましょう。

 

教材著者の紹介

教材著者は、内海克泰(うつみ・かつひろ)さん。

 

■内海克泰さん 略歴

1954年生まれ。

1979年青山学院大学文学部教育学科卒業後、明治学院高校教諭となる。

高校在職中、英会話学校、インタースクール通訳・翻訳科でも講師を務める。

2006年フリー通訳に。

現在、通訳・翻訳・バイリンガルMCとして活躍。

 

立派なご経歴の方なので、最初から発音も上手だったのかと思ったら、

今でこそ人前で英語を話していますが、私が本腰を入れて発音の練習を始めたのは、30歳を過ぎてからでした。

とのことです(本書「はじめに」より)。

 

本書には、そんな著者が自分で工夫したテクニックも散りばめられているとのことです。

期待しながら、教材の概要に入ります。

 

教材の概要

教材の概要はシンプルです。

 

「超低速メソッド 英語発音トレーニング」

2011年6月 初版発行。

 

■教材本体(テキスト)

A5サイズ・カラー・105ページ。

 

■CD

1枚、99トラック。

基本的には、テキストを見ながらCDに合わせて発音する練習がメインです。

 

さらに学習内容を見ていきます。

 

学習内容の詳細

そもそも「超低速」という本書のメソッドはなぜ生まれたのか?

 

これについては「はじめに」で解説されています。

 

著者が30年以上前、テレビで、優秀なピアニストを多く輩出している、あるピアノ教師のインタビューを見ていたときのこと。

 

「素晴らしいピアニストを育てる秘訣は?」

 

と聞かれて、そのピアノ教師は異常なほど遅いテンポで実演しながら、

「ここまでスピードを落せば、どんな人でも同じように弾けます」

と答えたとのこと。

 

それを見て、著者は「超低速」の着想を得たそうです。

 

ということで、本書は、流暢に話したいなら、「超低速」で正しい発音を学べ!という思想の教材になっています。

 

さて、この教材は、ボリューム少なめですが、意外といろんな種類のトレーニングが盛り込まれています。

レッスンごとに見ていきます。

 

Lesson1 舌と口のエクササイズ

正確な音を出すためには、しっかりと意のままに動いてくれる舌と口が必要です。

ということで、具体的な発音記号を学ぶ前に、舌と口を動かす練習をします。

 

Lesson1の練習内容

  • 舌と口のエクササイズ 5種類

 

Lesson2 基本中の基本

英語の発音の基本中の基本である、「アルファベット」と「数字」の発音の練習をします。

ここからCDを聴いて、まねて発音するエクササイズになります。

 

Lesson2の練習内容

  • アルファベット 26個
  • 数字 15個

 

Lesson3 基本母音

本書の中核レッスンに入ります。

まず母音、その中でも単母音(二十母音でない母音)を練習します。

CDを聴いてまねをするのですが、「アー」とか「エー」とかをひたすら言うのではなく、特定の母音を含む単語ばかりで作られた文を読む練習をします。例えば、以下のような文です。

The top of the hot pot was shot and got locked on the spot.

日本語の「ア」に近い母音を含む語ばかりで構成されていることが分かると思います。

※イギリス的発音では「オ」に近い音。

 

テキストには、唇の形や舌の位置のイメージ図が示されています。

 

 

ここで、「超低速」音声を聴き、一語一語ゆっくり完全に発音していきます。

CDの「超低速」は、ほんとに低速です。

 

スピークナチュラルの超スローリスニングより遅いです。

 

のでどんなにリスニング苦手な人でもはっきり聴き取れるでしょう。

機械で引きのばして遅くした音ではなく、ネイティブ話者ががんばってゆーっくり発音しているものなので、加工ノイズ等もなく、英語の「音」をしっかりと聴きとることができるようになっています。

 

ただし、練習用の文は、まったくナンセンスな発音練習専用例文なので、意味を深く考えずに割り切って練習する必要があります。

 

Lesson3の練習内容

  • Vowel(基本母音) 12個

 

Lesson4 二重母音など

Lesson1とやることは同じですが、このレッスンでは二重母音を練習します。

二重母音とは、myの「アイ」とかhowの「アウ」とかですね。

また、rの音を含む二重母音(bearの「エア」とかdoorの「オアー」等)も練習します。

 

Lesson4の練習内容

  • Diphthong(二重母音) 11個

 

Lesson5 子音

Lesson3、4と同様、子音を練習していきます。

当然、日本人の苦手な「th」、「l」、「r」の子音も練習します。

 

Lesson5の練習内容

  • Consonant(子音)19個

 

Lesson6 発音練習上のヒント

ちょっとここはコラム的な内容です。

著者の内海氏自身の体験から、発音上達のためのポイントについて解説しています。

精神論的な話ではなく、発音の際に意識したほうがいい点(技術的な内容)です。

 

Lesson6の内容(読むだけ)

  • 英語上達のためのポイント 7個

 

Lesson7 発音しにくい単語の練習

ほとんどの人にとってイライラするぐらいに発音が難しい単語を意識的に練習します。

例えば以下のような語です。

 

illegitimate

particularly

thoroughly

 

このような難しい単語についても、CDを聴き、まねをしてゆっくりと正確に発音する訓練をします。

 

Lesson7の練習内容

  • 発音が難しい単語の例 26個

 

Lesson8 区別しにくい音を区別する

このレッスンでは、特に日本人が区別しにくい音を集中的に練習します。

例えば下のように、母音だけ異なるため同じように聞こえる単語のペアを対象とします。

hot - hut

boat - bought

live - leave

上のような単語のペアを聞き分け、リピーティングします。

 

Lesson8の練習内容

  • 同じように聞こえる単語のペア 58組

 

Lesson9 つながった子音の練習

このレッスンでは、連続した子音の練習をします。

 

どういう趣旨かというと、

たとえば「street」を、「ス・ト・リー・ト」といっても伝わりません。

本来の発音は最初の3つの子音が重なり、全体で1音節しかない単語だからです。

 

子音のつらなりは、語頭に来る場合も、語の中間や語尾に来る場合もあります。

ここでは、そういった、子音が続いている語で、子音と子音の間に母音を入れずに発音する練習をしっかりとやります。

 

Lesson9の練習内容

  • 子音のつらなる単語30個

 

 

Lesson10 音のつながり(音の変化)

このレッスンでは、実際の会話で発音するときに、単語と単語がくっついて一部の音が消えたりする「音の変化」のある場合について練習します。

 

例えば、

book case

を発音するとき、bookkの音がcaseのcの音とつながって、発音されないような場合です。

 

CDを聴いて、音が消える仕組みを確認しながら、まねをして練習します。

 

Lesson10の練習内容

  • 音の変化の例 15個

 

Lesson11 内容のある文章を読む

本書の最後のレッスンは、文章の音読練習です。

 

これまで練習した発音を意識しながら、100語程度の、あまり専門的でない文章を音読します。

文章には和訳も掲載されています。

 

Lesson11の練習内容

  • 音読素材 5個

 

本教材の学習内容は以上になります。

各レッスンの後にはコラムがあり、著者自身の体験をもとに、発音を学ぶことの重要性が解説されています。

 

「超低速メソッド英語発音トレーニング」の評価

当ブログ独自視点で教材を評価していきます。

[check color="blue"]教材コンセプトはどんなところ?[/check]

本教材では、正しい英語の発音の基礎を「超低速」で練習して体得するという明確なコンセプトが立てられています。よく分からない原理で努力も練習もせず「聴き取れるようになる!」というインチキ教材とはまったく違い、発音記号の理解や母音、子音の発音といった要素レベルからスキルを積み上げていく、本格派教材です。

 

[check color="blue"]学習対象者、学習期間、到達レベル等は明確になっている?[/check]

学習対象者は、「ぜひ通じる英語を話したい」、「できたらネイティブのような英語を話したい」と思っているすべての人、とされています。「超低速」メソッドで学ぶため、学習開始段階でのリスニング力は問われません。

学習期間については設けられておらず、時間がかかっても一つ一つをクリアして進めていくことが推奨されています。

到達レベルについても特に想定されておらず、本書をやったから○○ができるようになる、という類のものではありません。しかし、音の違いや日本人の苦手な音を意識した学習内容になっているので、本書である程度練習すると、英語らしい発音をするためのポイントが把握できるようになることは期待できます。

また、聴き取り能力も向上したことを実感できると思います。

 

[check color="blue"]教材内容を実践できる?(学習メソッドは現実的なもの?)[/check]

CDとテキストの両方が学習に必須なので、自宅で学習できる環境のあることが前提です。

学習できる環境があれば誰でも教材内容を実践できます。

逆に言えば、発声練習できないとまったく実践できません。

そういう観点からは、ハードルの高い教材かもしれません。

 

効果が得られると期待できる内容になっているか?

声を出してしっかり練習すれば必ず効果が出ると期待できます。

特に、教材中でも推奨されているように、自分の発音を確認して、CDの音声と比べながら練習すれば上達が速いでしょう。ボイスレコーダー等を持っていればそれを活用するのがベストですが、持っていなくても、自分の声を聞く方法が教材中に書かれているのが良いです。

 

[check color="blue"]他の教材と比べて優位性はある点は?[/check]

上にも書きましたが、「超スローリスニング」を売りにしているスピークナチュラルよりも遅い「超低速」音声メソッドが特色です。

ただし、「発音」に特化しているぶん、スピークナチュラルのような日常会話の練習は、本書の範囲外になっています。

また、発音記号そのものについての座学的解説は少なめですが、発音記号と実際の音との対応はしっかり学べるようになっています。

 

[check color="blue"]教材の品質、使い勝手等は問題ないか?[/check]

テキストの印刷も、CDの音質も問題ありません。

少し気になるのは、教材全編を通じて単語の意味や発音記号が掲載されていないことです。

紙面スペース制限等もあるため割愛されている事情もあると思います。

しかし、特にLesson3~Lesson5の例文には和訳も語注もないため、知らない単語がある場合、ほんとに意味も分からず読み上げるだけになってしまいます。文としては成り立っていますが意味のない文なので、何度も音読するのがツラくなってくる人もいるかもしれません。

 

[check color="blue"]教材に投入する費用や学習時間に見合う内容か?[/check]

CD付きで1200円+税なので、一般書籍教材としては標準的か少し安いぐらいでしょう。

教材の練習題材はボリュームがかなり抑えられていますので、1回練習するだけならすぐ終わってしまいます。

しっかり練習すれば、発音についてもリスニングについても、学習期間に見合うだけの効果が期待できます。

ねばり強く練習を続けるだけの本気度があるかどうかが分かれ目です。

 

総評

超低速メソッド英語発音トレーニング」の総合評価・・・評価B(良い教材)

 

本書は、「英語教材最強の1冊」(晋遊舎)他で、TOEIC初級者向けのリスニング対策として推奨されていたこともあり、レビューしてみました。

 

基本的には、しっかりした内容の良い教材だと思います。

 

本書は英語にはどんな「音」があるのか、そして日本人のカタカナ英語が通じないのはなぜなのか。

そういった背景を理解するとともに、英語の基本的な発音のしかたを学べるようになっています。

 

発音記号についても、無駄に専門的にならないレベルで解説されているのが良いです。

例えば、ringとかshipの[i]の音については、次のように書かれています。

「イ」に聞こえますが、良く聞くと、少々「エ」の音が入っています。練習法としては、モデルを良く聞いて、「イ~エ」を途切れずに続けて言ってみます。「イ」から「エ」へ移動する中間点にこの音を見出すことができます。

こんな感じで、学習者が理解に苦しむことのないように、なおかつ発音記号ごとにどんな音かを認識できるように配慮して説明されています。

 

本書のメインはLesson3からLesson5です。ここだけでもしっかりやれば効果が期待できるでしょう。

ただ、ここでの練習用例文が、もう少しちゃんと意味のある文だったらもっと良かったのに・・・というのがもっとも残念なところです。

また、Lesson11では、ひとまとまりの意味のある文章が用意されているのですが、CD音声は普通のスピードで1回読むだけです。これでは発音を確かめる以外にあまり活用できません。これも残念な点です(リピーティングのための空白時間もない)。

 

◆ひとまとまりの文章で音読練習をするなら

>>音読パッケージトレーニング

 

ということで、本書の後半部分はオマケと考えましょう。

Lesson3~5の練習をある程度の期間みっちりやってみることです。

効果が感じられたら、他の音読教材や英会話教材を使って、より実践的な練習をするのが良いでしょう。

 

これから腰を据えて発音を身につけていきたい人には、最初の一冊としておすすめします。

 

また、TOEIC初級者のリスニング基礎力アップとしてもおすすめです。

「発音できないものは聞き取れない」

と言われることもあるように、リスニング力を上げるには、ゆっくり正確に聞き取る練習をすること、そして、内容のわかっているものを聞き取ることが大切です。

 

継続的なスコアアップのためには、TOEICの試験のスピードで聞き取る練習が必要になるのは事実です。しかし、そこで高速リスニング教材などに手を出すのは危険です。最初の段階では本書のような低速メソッドの教材を使って、英語の「音」を認識する練習をしましょう。

 

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