この記事では、入門者向け英会話教材「イングリッシュ・クイックマスターzero」のレビューを書いています。
教材を実際に購入し、学習してみて感じたこと等も書いていますので購入を検討している方は読んでみてください。
教材制作者の紹介
イングリッシュ・クイックマスターzeroは、英語教材出版アルクの通信講座です。
アルクといえば「1000時間ヒアリングマラソン」、「イングリッシュジャーナル」など有名英語教材を出版している会社です。
教材の概要
教材の基本情報は以下のとおり。
◆イングリッシュ・クイックマスターzero基本情報
[ジャンル]
入門者向け英会話教材(スピーキング)
[対象者]
・なんとなく英語が気になる人
・将来ぺらぺらになりたいが、まずは初級向けからという人
・長い間、英語にブランクがある人
[学習時間]
1日5分×週5日
[学習期間]
6ヶ月
[価格(税込)]
19,440円
この「イングリッシュ・クイックマスターzero」を含む「イングリッシュ・クイックマスター」シリーズは、2015年イード・アワード英語教材部門で顧客満足度最優秀賞に輝いています。
顧客満足度No.1英語教材は「イングリッシュ・クイックマスター」…イード・アワード2015
教材の内容
教材を注文すると数日後に下の写真のような箱で送られてきます。
下の写真が教材一式です。CDは最初からバインダー式のケースに入っています。
教材には以下のものが含まれます。
◆テキスト(スクリプト集)
B6サイズ、6冊、各51ページ。
「学習のご案内(コースガイド)」も付属。
テキスト紙面はプレーン、シンプルです。
見やすいレイアウトですが、モノクロで地味な雰囲気です。もう少し親しみやすい感じにしても良かったのではとも思います。
あまり情報を詰め込まずスッキリとしたレイアウトになっています。重要単語は語注があるので、自分で単語を調べたりする必要もなく、すぐにスピーキング練習に取り組めます。
◆CD
12枚、各74分。
スキット部の音声には背景音を入れて、臨場感を演出しています。
学習内容の詳細
イングリッシュ・クイックマスターzeroの特徴は、学習内容がとてもシンプルで、特に学習方法の説明などを読まなくてもすぐに学習を始めることができる点です。
ここでは、学習内容について見ていきます。
スキットでのレッスン
英会話で頻出の「基本表現」を、スキットを通して学びます。
基本表現とは、例えば
Nice to meet you. (はじめまして。)
とか、
I'm looking forward to seeing you again. (またお会いできるのを楽しみにしています。)
などです。
5語前後の基本表現がほとんどなので、CD音声の真似をしてつぶやくのはそれほど難しくないでしょう。
学習ペースとしては、1回のレッスンでひとつの基本表現を覚えます。
具体的には、以下のような練習をします。
1.[Listen]スキットAを通してリスニング
2.[Check]スキットAの英語と日本語訳のリスニング
3.[Repeat]基本表現のリピーティング お手本の後に自分でつぶやく 3回
4.[Practice]基本表現の部分だけがブランクになったスキットで、ブランク部分で基本表現をつぶやく練習(一種のロールプレイ)
5.スキットBで[Lisen]、[Check]、[Practice]
6.スキットCで[Lisen]、[Check]、[Practice]
一つの基本表現を学ぶために、場面の異なる3つのスキットが用意されているのが特徴です。
「ああ、会話がこういう流れになったら使えるんだな」と理解しやすくなっています。
また、スキット自体も、Aさん→Bさん→Aさんという短い会話なので、会話の様子がスッとイメージできるようになっています。
1回のレッスンで一つの基本表現に集中し、繰り返しつぶやくことで、英語がしっかりと定着していきます。
それぞれのレッスンは独立していますが、1週間ごとにまとまったテーマ(話題)になっています。
例:
レッスン1~5:出会い/別れ
レッスン6~10:趣味・経験
レッスン11~15:家族・友人
レッスン16~20:目標・応援
話題に応じた頻出の基本表現はある程度決まっているので、まとめて学習することで関連付けて覚えることができます。
1ヶ月で20の基本表現を学習し、教材全体で120個の基本表現を覚えるのが目標になります
チャンツ
音楽に乗せて基本表現の英文音声が流れてくるので、続く空白時間にリピーティングをします。
アップテンポ気味の音楽を使った[朝リズム]と、ゆったりとしたテンポの[夜リズム]があり、好きなほうを選べます。
朝リズムを夜やっても構いません。
スキットはありませんが、基本表現を繰り返しつぶやく練習ができる点では効率的と言えるでしょう。
※ラップ音楽のようにリズミカルに英文を話すわけではないので、難しくはありません。
スキットでのレッスンで、基本表現の意味や使う場面を理解し、チャンツで基本表現を繰り返しつぶやくようにすれば、基本表現が反射的に出てくるレベルまで定着しやすくなります。
学習内容は以上です。
やることがとてもシンプルで、すぐに取り組めることがこの教材の特徴です。あまり実践上のポイント等を気にすることもなく、スキットとチャンツを行ったり来たりすることで、場面に即した基本表現を覚えていけるようになっています。
また、アルクの教材にしてはめずらしく、テキストを見なくても、散歩しながらとか家事をしながらでも練習できます。
6ヶ月というとけっこう長期間ですが、一回の学習時間は5分程度だし、覚えるものは基本表現だけなので、さほど負担にならず学習を継続することができるボリュームです。負担が少ないので中断してもまたすぐ再開すればいいだけです。
教材にはさらに、以下のような学習補助コンテンツやサポートが用意されています。
テストコ
教材ダウンロードなどができるアルクのサイトです。
PCを介さず直接スマホに教材をダウンロードできるのは便利です。
アルク教材専用アプリ「ALCO」
ダウンロードした教材を閲覧・再生するためのアルク教材専用アプリ。
イングリッシュ・クイックマスターzeroでは、以下のダウンロード教材が利用できます。
◆MP3音声
CD音声のトラックと1対1に対応しています。
トラックごとにタイトルが付いており、聴きたいものをすぐに選べて便利です。
「ALCO」で再生すれば、スマホ画面にスクリプトを表示させることができます。
さらにALCOでは、以下の便利な機能があり、CDよりも色々な使い方ができます。
・自分で設定したA-B間をリピート再生可能
・×0.5~×3の範囲で再生速度設定可能
◆英文スキットのみを抜粋した特別音声
各レッスンのスキットA~Cの英文音声のみをまとめたもの。
余計なナレーションなどがないので、シャドーイングをしたい人はこれを使うとスムーズに練習できます。
◆電子書籍
テキストの内容を完全にカバーしている電子書籍で、音声再生機能もあります。
下の写真の三角の再生ボタンを押すと音声が再生されます。(ただし、音声再生スピード変更やA-B間再生などの機能はありません。)
スマホがあればテキストもCDも不要というスグレモノです。
これらのダウンロード教材は機能が重複している部分がありますが、選択肢が多いのは良いことです。
CAMPUS
受講者サポートサイト。
コーチに質問したり、受講者同士で交流したりできます。
発音練習アプリ「MyET」
自分の発音を確認できるシステム。
教材の良い点、気になる点
「イングリッシュ・クイックマスターzero」の良い点、気になる点を挙げておきます。
◆気になる点
・テキストがモノクロでさびしい。
・ターゲットとなる基本表現以外を練習するメニューがない(基本表現に集中できるというメリットの裏返しではありますが)。
◆良い点
- 1回の学習時間が短いので、これから英語をやろうとする人にとっては取り組みやすい。
- 1回のレッスンで覚えるべき基本表現はひとつだけなので、集中して練習できる。
- スキット全部をリピーティングするとなると大変だが、この教材ではスキットの中の基本表現だけ覚えればいいので、プレッシャーをあまり感じることなく学習できる。
- 6ヶ月で120の基本表現なので入門者でも無理せず続けられる。
- 短いながらもスキットを通して学習するので、どんなシチュエーション、文脈で使うフレーズなのかイメージしやすい。会話型教材と単文型教材のメリットを合わせた形になっている。
向いていない人
「入門者」でない人にとっては、実践する内容が少ないので、もう少し上級の教材を選ぶほうが良いでしょう。
総合評価・・・B(良い教材)
「入門者」向け英会話教材「イングリッシュ・クイックマスターzero」をレビューしてきました。
この教材は、ゼロから英会話をはじめる人にとって一番大切なことを押さえたものになっています。
「一番大切なこと」とは、せっかく始めた英会話学習を、途中で投げ出さずに「続けること」です。
そして教材内容が「続けられる学習」であるためには、以下のことが必要です。
1.学習が楽しいこと(退屈でないこと)。
2.学習が役に立つと感じられること。
3.達成感があること。
そして「イングリッシュ・クイックマスターzero」は以下のような工夫をしているので、「続けられる」教材になっています。
◆スキットで使える表現を楽しく学べる
基本表現を単体で(スキットなしで)覚えようとすると学習が退屈な作業のように感じられてきますが、本教材では3つのスキットを通して基本表現を学ぶので、退屈になることはありません。
また、どんな場面で使える表現なのか理解した上で練習できるので、「無駄な学習をしている」と感じることもなく学習を続けられます。
◆チャンツでゆるーく基本表現の練習ができる
基本表現を「勉強しよう」「練習しよう」と思うと力が入ってしまいますが、チャンツでリズムに乗りながら(あるいはリラックスしながら)つぶやくほうが長続きするし、結果として深く記憶に定着します(軽やかに繰り返しつぶやくと、長期記憶に残りやすいといわれています)。
◆スキットの「Practice」では達成感を得られる
本教材のスキットレッスンでの「Practice」パートは、会話中でブランクになっている部分をしゃべる「ロールプレイ」練習になっています。
「ロールプレイ」は、相手の言葉に対して、タイミングよく反応するスキルをつけるための非常に有効なメソッドで、英会話の模擬練習にもなります。
その意味では、本教材は入門者用といえども本格的な英会話の基礎を学べる構成になっているといえます。
この「Practice」で基本表現をうまく言えれば、「こうやって会話をしていけばいいんだな」という達成感が感じられるでしょう。
その他教材のクオリティ、使い勝手等は問題ありません。アルク教材はそういった面での安心感があります。
ちょっと値段が高いかなという気もしますが、便利なスマホアプリが用意されている点や、サポートが充実している点も合わせれば、妥当なところかもしれません。
この教材の目標は基本表現をマスターすることですが、スキットの基本表現以外の部分も、会話で使える頻出表現がたくさんあります。使い方とやる気次第で、長く使える教材にもなり得るということです。
やさしいところからマイペースに英会話をやっていきたい人には、「イングリッシュ・クイックマスターzero」をおすすめします。