私はTOEIC対策に「音読」を活用し、2018年11月のTOEIC 公開テストで990点を達成しました。
教材を実際にどのように使って音読したか、教材ごとに記事を書いています。
- 「TOEICテスト 新形式精選模試 リスニング」の使い方
- 「TOEICテスト 究極のゼミ Part7」の使い方
- 「TOEIC TEST 900点特急Ⅱ 究めるパート5」の使い方
- 「TOEIC L&R TEST 900点特急 パート5&6」の使い方
今回は、濱崎潤之輔先生の「新TOEICテスト990点攻略」を使ったパート1勉強法について書きます。
990点が射程距離内に入ってきて気づいたこと
990点を取ろうと思うと、「パート1、パート5とはどんなパートか?」の認識が900点のときと比べると変わってくるし、変えなければいけません。
パート1・パート5の「1問」が致命傷に発展することも
TOEICで「難しいパートはどれか?」と聞かれたら、「パート3・4・7」あたりを答える人が多いんじゃないでしょうか。
リスニングあるいはリーディング自体の負荷が高いこと、思考力・判断力・短期記憶力が求められること、そして問題数が多く試験時間の中で占める割合が多いこと、等を考えればそれは自然なことだと思います。
一方、パート1やパート5は相対的に取り組みやすいパートとして見られることが多いでしょう。
単文レベルでの問題なのでリスニング・リーディングの負荷は低いし、「手がかりを探す」「散らばっている情報を統合する」といった複雑な過程が求められません。
ですからパート3・4・7と比べれば苦手意識が低い人が多いと思います。
しかし、パート1・パート5は、それぞれリスニング・リーディングの最初のパートなので、高得点を取るためには決しておろそかにできません。
これらのパートで「全問正解」できたか、「いくつか落してしまった」かによって、残りのパートに臨むメンタル的な環境が大きく変わってきます。
リスニング全体で3問程度までのミスなら満点を取れるといわれますが、パート1で1問ミスしてしまうとパート2・パート4で合計2問しかミスが許されない計算になります。
また、リーディングで満点を取るには基本的にノーミスが求められます。
990点を狙うなら、パート5は1問20秒以内&全問正解が前提。
パート1・パート5は比較的コントロールしやすいパートでもある
パート1・パート5は、事前の(ふだんの学習での)対策がしやすいパートといえます。
「知っていれば解ける」場合が多いからです。
TOEICで対策しにくいのはパート2、パート4じゃないでしょうか。
パート2ではしっかり聞き取れても「は???正解がない?」と感じる会話にしばしば遭遇します。
いわゆる「間接的な応答問題」、「距離の遠い問題」ですね。
またパート4では、トークの場面を冒頭で把握できなければ非常に不利になります。
(事前に語彙や表現を覚えても、会話のシーンを瞬時に把握するのにはあまり役立たない場合も多いです。)
パート3・6・7はパート2・4と比べればリスク要素が少ないと思いますが、1問を解くのに必要な集中力持続時間はパート1・5より長い感じですよね。
集中力は体調によってけっこう変わってきます。
ということでパート1・パート5は語彙や設問パターンを知っていればそのままスコアにつながりやすいパートといえそうな気がします。
990点を目指すならパート1・パート5はこれでもかというぐらい万全な準備をすべき
990点に近づくにつれて、自分がパート1・パート5をいかに舐めてかかっていたかに気づき、急きょこれらのパートへの対策を始めました。
その一つがこの「新TOEICテスト 900点攻略」を使った「正解データベース構築&強化」です。
「新TOEICテスト 990点攻略」は「解く」のではなく「覚える」
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本書は、TOEIC990点を数十回取得している濱崎潤之輔先生執筆の「990点を本気で取りに行く人向け」教材です。
一般的な意味での「上級者向け」ではなく、990点を現実に狙える範囲にいる人にターゲットを絞り込んだ内容になっています。
つまりハイレベルな人に対しては弱点・盲点になりやすいポイントを集中的に学習するメニューが用意されている一方で、700点~800点台程度の人にとっては当面必要のない事項ばかり書かれているということです。
990点を狙える位置にいる人はすでに高度な知識・リスニング力・読解力を備えているので、一般的な「解説」や「解法」のレクチャーは必要ありません。
パート1であからさまに写真と関係ない選択肢を見分ける力や、パート5で[構文的視点]で速く・正確に解答するスキルはすでに身につけていることでしょう。
そういったレベルの人に必要なのは、「正解データベース」を990点レベルまで愚直に構築・最適化することです。
出題される可能性のある語彙・表現を脳内にストックし、「たまたま出題された難問題」にもカンや確率ではなく知識で対応できるように準備することです。
本書、特にパート1・パート5では、まさに上記のような「正解データベース」づくりのためのトレーニングと問題が用意されています。
私はもちろん、これまで自分に確実な効果をもたらしてきた「音読」を通して本書を活用することにしました。
パート1対策
本書のすごい点の一つは、本気でパート1対策をするためのメニューが用意されていることです。
990点取りたいならパート1も全力で取り組むべし!という著者の真剣な態度が伝わってきます。
実際、本書には以下のように書かれています。
Part 1は決して甘いパートではないということを、しっかりと肝に銘じておいてほしい。
(本書p.12)
そして具体的に何をするかというと、本書のパート1対策は大きく分けて「特有の不自然な表現に対応する」と「聞き分けの困難な表現に対応する」という2本柱になっています。
とはいえ、私が音読をするにあたっては、これらのことを意識することは特にありません。
内容を把握した上で、英文を反復的に音読するだけです。
本書の構成は、テキスト本体+別冊模試+CD2枚。
パート1対策としては、以下のメニューが収録されています。
- Training
- Practice Test
- Final Test(別冊模試)のPart 1
これらに含まれている例文の音読を通して、語彙・表現を獲得します。
Training(50問;例文50個)
ここはCD音声を聴き、写真を参考にして全文をディクテーションするトレーニングになっています。
写真は下のような感じで、もともとは明瞭な写真だと思うのですが紙面上では非常に小さな写真になってしまっているのが難点です。
そして写真に対応する英文とその訳、解説が示されています。
語注もありますがあまり親切とはいえません(例えばpodium「演台」などがピックアップされていない)。
本書では上記のとおり「ディクテーション」をするように書かれていますが、私は次のように使いました。
1.英文の内容を理解する
まず全文をていねいに見て、知らない単語は自分で調べ(辞書、画像検索等)、語句が指すものをイメージできるようにします。
例えば下の画像の中央にある11番の写真。
写真に対応する英文は以下のとおり。
Some microphones are attached to the podium.
(いくつかのマイクが演台に取り付けてある)
ここでは、「podium=演台」と言葉を覚えるのではなく、podiumという言葉を聞いたときに、「講演をする人の前にあって、マイクとかが立てられている机のようなもの」がイメージとして思い浮かぶようにします。
2.英文と和訳をパソコンで入力する
英文とその和訳を、まずワープロソフトで書き出します。ここではまず和訳を入力し、その下に英文を入力しています。
3.英文と和訳をスマホにコピーする
ワープロソフトに打ち込んだテキストをコピーして、ワープロソフトからスマホのメモアプリに貼り付けます。
ワープロソフトを使ったのは単に入力がしやすいという理由だけです。
ワープロソフトでは誤記訂正機能があるので、入力ミスのリスクが減るメリットもあります。
4.音声ファイルを準備する
付属CDに収録されている朗読音声ファイルをオーディオプレーヤに入れます。
私はソニーのNW-A35を愛用。
5.音声を精聴する
朗読音声を聴いて発音、リズム、イントネーションを確認します。
音声は例文ごとにアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアのナレーターが入れ替わりで吹き込んでいます。
アメリカ人・カナダ人と比べるとオーストラリア人は聴きづらいときがありますが、TOEIC公式ナレーターのオーストラリア人よりは聴き取りやすいかと思います。
6.音読を実践する
スマホを見ながら例文を音読します。画面をスクロールさせることで、次のような各トレーニングができます。
(1)和訳を確認しながら英文を音読
解説として読む場合には、上の写真のように英文と和訳を上下に並べて書いていると対比しやすくていいと思います。
しかし音読をする場合には、どうしても訳が目に入ってきて気が散ります。
そこで次のようにします。
(2)和訳を隠し、英文のみを表示させた状態で、文の内容をイメージしながら英文を音読
このほうが和訳が目に入らない分、英文に集中できるので音読しやすいです。英文の意味がわからなかったら、スクロールすれば和訳をすぐに確認できます。
(3)英文を隠し、和訳のみ表示させた状態で、和訳から英文を作る
和文→英文作成(瞬間英作文ですね)はなかなか難しいので、英文を見ながら数回英文を音読したあとで、効果確認的な目的でたまにやっていました。
上のような単純な文にも、多くの重要ポイントが含まれています。
先に書いた"podium"(演台)という語彙以外にも、例えば
- 「マイク」は英語では"microphone"。「マイク」はカタカナ英語なので通じない。
- 「取り付ける」は"attach"。TOEICでは「(ファイル・データを)添付する」の意味でパート5~7に頻出だが、リアルなモノを取り付けることを表すのにも使う。
- 時制/態は"are attached"。ここでは、取り付けるという動作は完了しているので、are being attached(受身の進行形)は使えない。一方、取り付けられた状態が継続しているので、have been attachedなら正しい表現となる。
不思議なもので、こういった「知識」だけを覚えようとすると大変ですが、音読を繰り返して英文がある程度身体になじんでくると、ポイントが自然に見えてくるようになります。
こんな感じで、スマホを使って音読をします。
スマホだと通勤時などスキマ時間にもサッと見れるメリットがある一方、私が他の教材でやっているように「正」の字で音読回数を管理できないのがデメリットです。
紙の教材は手軽に書き込みができるという捨てがたいメリットがあるので、今後も存在し続けるんだろうなーと思います。
Practice Test(10問;例文40個)
ここはTOEIC形式の問題になっています。
英文・訳・解説も詳しく書かれているので、読んで内容を理解します。
写真1枚に対して選択肢4個なので、写真に対応していない選択肢の例文3個については和訳と語注を参考に自分で内容を理解し、イメージを持っておくことが必要になります。
このPractice Testも、やることは「Training」と同じで、英文と和訳とをスマホで見て音読するだけです。
Final Test(10問;例文40個)
ここもPractice Testと同様、TOEIC形式の問題。
そして英文、和訳、解説。
やることも同様。スマホのメモアプリで英文と訳を見られるようにして音読。
以上合計で、パート1例文90個を本書で学ぶことができます。
濱崎先生が厳選した語句・表現を含む例文なので、丸暗記しても損はないでしょう。
パート1対策として音読をする意義
試験では、写真を見て、音声を聞いて正誤を判断するのであって、一見そこには「文字」が介在しないように思えます。
したがって、文字を見て音読するというワークは「的外れ」あるいは「遠回り」に見えるかもしれません。
「音声」と「意味」を関連付けて覚えることさえできればパート1は攻略できる
→音読など不要、という考え方もあるでしょう。
しかし、音読という能動的な行為を通して覚えるほうが、「(写真を)見る」「(音声を)聴く」という受動的な学習方法よりも記憶に残りやすいと思います。
本書で推奨されている「ディクテーション」も同じで、聴いたものを紙に書き取る(あるいはパソコンでタイピングする)という能動的な作業を通して覚えることで、記憶の定着率を高める効果が得られるのです。
また、パート1対策にここまでやらなくても・・・と思うかもしれません。
それについては、濱崎先生が本書の中で書いていることが参考になります。
毎回1~2問出題される難易度の高い問題は、他のパートにはあまり出現しない、なじみの薄い表現を含んでいることが多い。そのため、Part 1で出現される可能性のある表現をできる限りたくさんマスターしておく必要がある。
(本書p.15)
つまりパート2~7への対策をがんばったからといって、パート1で常に全問正解できる実力が「自然に」ついてくる、という現象は起こらないわけです。
端的に言えば、パート7の問題をたくさん解いても、wheelbarrow(手押し車)やwindowsill(窓台)といったパート1特有の要注意単語に出会う可能性は低いと。
よって他のパートとは独立したトレーニングが必要ということですね。
私自身、パート1対策をまじめにやらずにいたことは、かなり反省すべき点です。
現在私はTOEICの勉強を中断していますが、再び990点を目指して勉強することになったら、間違いなくパート1対策にしっかり時間を投入します。
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次回は本書を使ったパート5対策について書きます。