音読を軸とした学習で、TOEIC 990点に到達したことに関連した記事をずっと書いてきました。
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この記事では、私が「TOEICテスト新形式精選模試リスニング」を使って実践していた音読の要領について書きます。
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音読の準備をする
使うのは「解答・解説」
やることは設問を解くことではなく「音読」なので、問題冊子である「別冊TEST」ではなく、「解答・解説」のほうを使います。
下調べ&語句にマーキング
音読する英文・和訳・語注をひととおり見て、自分の知らない語句、馴染みのない語句に蛍光ペンでマーキングをします。
語注がないところは自分で辞書を引いて意味をメモする等の下調べもしておきます。
これから音読する英文についてできるだけ理解しておくことです。
問題を解かずに英文を見てしまうのは、「もったいない」と感じる人もいるかも知れません。
模試はふつう、問題を解いて力試しをするのに使うものですよね。
しかし、音読をすると決めたのなら、逆に英文をしっかり見て内容を理解しておく必要があります。
意味のわからないものを音読するのはNGです。
「意味のわかるものを音読しても意味ないのでは?」と思うかも知れませんがまったく逆です。
文法的にも内容的にも理解できているものを音読/リスニングすることで、英語力の進化が始まるのです。
音声ファイルをプレーヤに入れる
音声ファイルをスマホやオーディオプレーヤーに入れます。
私はソニーの再生スピード可変のウォークマンを使いました。
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音声を聴いて発音・イントネーションを確認する
音読に入る前に、テキストを見ながら、音読しようとする英文の音声を聴き、発音・イントネーションを確認します。
「まず、どれだけ自分で聞き取れるか試してからテキストを見るべきでは?」
と思う人もいるでしょう。
しかし私の場合最初からテキストを見て、音声とスクリプトを確認してしまいます。
「実力確認」的な行為は、その時点での自分のスキルレベルを知るのには役立ちます。
が、英語力を上達させる効果はありません。
そこに時間をかけるメリットは薄いです。
むしろ、「やった気」になって満足してしまい、本来やるはずの「音読」をしなくなるリスクすらあります。
ここは意見が分かれるところかもしれません。
例えば森沢洋介氏の有名な音読教材「音読パッケージ」では、最初はテキストを見ずに繰り返しリスニングすることが推奨されています。
しかし時間によほど余裕がある人以外は難しいのではないかと私は思うのです。
ということで、私は最初からテキストも見て音声も聴いて、早く音読に入るのが良いと思います。
以下、パートごとに音読の要領を書いていきます。
パート1を音読する
それではパート1から見ていきましょう。
必要なら「別冊TEST」を見ておく
「解答・解説」にも問題の写真が掲載されているので、基本的にこちらだけで音読学習を進められます。
ただし写真が小さいため、わかりにくいときは最初に「別冊TEST」のほうで大判の写真を見て、内容を理解しておきます。
選択肢を音読する
選択肢(A)~(D)の4つの文を順に音読します。
上の写真の問題なら、次の文を順に音読します。
They're putting on hats.
They're performing in an auditorium.
They're marching in a parade.
They're polishing musical instruments.
正解の選択肢は写真と英文を見て内容を確認しながら音読します。
不正解の選択肢の英文は写真がありませんが、和訳を見て文の内容をイメージしながら音読します。
知らない語句があってイメージがわかない等の場合は、その語句を辞書で調べたり、ネットで画像検索したりして内容を把握して音読します。
上の写真の問題でいえば、(B)のauditoriumを知らなかったのでマーキングしています。
ちなみにこういった「物」「場所」「建物」等は画像検索が有効です。
「正」の字で音読した回数を記録する
音読した英文のそばに正の字で音読した回数を記録していきます。
本書はサイズが大きいうえに、周囲にマージンがあるので正の字を書き込みやすいです。
うまく読めなくても回数はカウントに入れます。
書き込んだ「正」の字を何かに使うわけでもないですが、記録しているとなぜか継続しやすくなります。
また、特定の英文・文書ばかり反復していると正の字の個数にバラつきが現れるので、自分の学習サイクルの偏りを確認し、バランスを立て直すことができます。
写真・内容・英語表現を結びつける
写真に写っているものと、それを表す表現を関連付けて覚えることが、もっとも強力なパート1対策になります。
覚えるべき表現については解説に書かれているので、解説を読んで「ふーん、これが頻出語なんだなー」となんとなく意識しながら写真を見て、繰り返し音読をします。
下の問題なら、「柵、手すり」を表すrailingがパート1的な頻出語です。
railingと聞いたら、普通は「電車の線路」とかを思い浮かべるのではないでしょうか?
おそらく「柵、手すり」を連想する人は稀でしょう。
そこで、写真の女性が座っている「柵、手すり」とrailingを頭の中で関連付ける、つまり「正解データベース」を構築するために、何度も音読をするわけです。
この地味で地道な作業が絶大な効果をもたらします。
パート2を音読する
質問と「正解の返答」を音読する
パート2では、返答は3つ選択肢がありますが、正解の選択肢だけ読みます。
下の問題なら、質問の
When did Dr. Peters stop by?
とそれに対する正解の返答である
Early this afternoon.
を音読します。
不正解の選択肢は質問とつながらないので、読んでいるとわけがわからなくなります。
自然な会話のやりとり(必ずしも自然でない場合も多いですが)を覚えるためにも、私は正解の選択肢だけ音読するようにしました。
何気ないフレーズに意識を置きながら音読する
パート2では短いセリフの中に、口語的なフレーズが多く含まれます。
get、take、have、keepなど、頻出動詞と前置詞が組み合わさってできたイディオムなどもよく出題されるので、ときどき和訳を見て意味を確認しながら音読します。
上の問題の例でいえば、
・stop by「立ち寄る」
・drop off「~を届ける」
などですね。
こういったstop、dropなど、ありふれていて特徴のない動詞は見過ごすことが多く、特に設問にからまない部分だと注意が向かないので学習の盲点になりがちです。
しかし教材中で使われているなら、TOEIC本試験で出題される可能性があるわけです。
覚えて損をすることはありません。
暗記することに固執しない
スピーキング力もつけたいなら、パート2のやりとりを丸暗記するのを目標にするのも良いと思います。
しかし単にTOEICスコアを上げたいだけなら、テキストを見ながらの音読で十分です。
反復回数を多くすることで結果的に暗記できる場合もありますが、暗記を目標にする必要はありません。
「暗記」を目標にしてしまうと、受験勉強っぽくなって自分にムダな負担を強いることになります。
自分にとって極力負荷の低いことを大量に反復することがコツです。
パート3を音読する
ベタにセリフを音読する
AさんBさん両方のセリフを音読していきます。
下の写真の問題なら、W(女性)の"Hello. I saw a poster advertising..."から、M(男性)の"All right, but if you want to ...won't last long."まで、ベタに音読していきます。
「音読は感情を込めて」とよく言われますが、感情がこもっているかどうかというより、「どういう状況で」、「どんな内容を話しているのか」をイメージできているかどうかが大切です。
そのセリフを発する目的は?
相手に何か頼みごとをしているのか?
単なるコメント、つぶやきか?
説明、報告か?
話題を振っているだけか?
といったことを、会話で話されている内容から把握できていればOKです。
そういった「状況」、「意図」を理解することが本質的なのであって、声優さんのように感情を込めて音読する必要はないと思います。
そもそもTOEICに出てくる会話は事務的な内容がほとんどなので(予約、スケ調整など)、感情を込めるのはムリです。
設問は基本、無視
音読は会話の部分だけやります。
設問や選択肢は音読しません。
設問を放ったらかしにするのはもったいないのですが、気にせず音読を進めます。
うまく読めなくてもとにかく繰り返す
パート3の会話では、構文的に複雑な文はありません。
しかし、短時間でたくさんの情報を盛り込むために、修飾する語句がたくさんくっついた長いセンテンスが多いです。
(修飾語句をすべて取り去ると、文型は単なる「S+V」とか「S+V+C」だったりします。)
一息で言い切れないものもあります。
そういう場合は、途中で息継ぎをしたり、休憩をとったりして、無理せず音読を続けます。
無理すると酸欠で頭が痛くなったりしますので、時には中断する勇気も必要です。
疑問文は英語脳強化のチャンス
ちょっと考えてみてほしいのですが、
パート1に疑問文は出ますか?
出ませんね。
パート4には?
留守電メッセージのとき出るか出ないかという程度。
パート5には?
疑問文は出ないですよね。
パート6・7は?
文書がEメールのときには出るかもしれない、という程度です。
要するにTOEIC全体で「疑問文」の割合が非常に低いのです(設問は除く)。
疑問文が出るのはほぼパート2、3に限られます。
これはTOEIC学習のデメリットといえます。
つまりTOEIC対策中心の学習だと、疑問文を理解する、あるいはサッと作る「英語脳」が養成されにくい、バランスの悪い学習になりがちということです。
私も疑問文を音読(あるいは黙読)しようとすると、平叙文より難しいと感じることが多かったです。
ということで、パート3で疑問文が出てきたら、うまく音読できなくても当然です。
むしろ疑問文の音読は「英語脳」のバランスを改善する良い機会ととらえて音読をするのが良いと思います。
パート4を音読する
文の切れ目を理解して読む
パート4もパート3同様、長い英文が出てきます。
ネイティブスピーカーの話し方(イントネーション、リズム等)をマネるように音読するのが基本ではあるのですが、「構文・意味を理解した上で」マネるということです。
例えば下の問題はシャンプーのコマーシャルですが、下の赤線部の文が要注意。
改めて文を抜き出すと
UltraRadiant replenishes the nutrients your hair needs to be shiny and healthy.
ここでの「needs to」は「~する必要がある」の「need to ~」ではなく、「必要とする」のneedです。
その目的語はthe nutrientsになります。
(※"UltraRadiant"は商品名)
nutrientsを修飾する節はyour hair needsまでで完成していて、to be shiny and healthyはhair(髪)がnutrients(栄養)を必要とする理由を付け加えているだけです。
to be shiny and healthyの前にin orderが省略されていると考えると分かりやすいかもしれません。
UltraRadiant replenishes the nutrients your hair needs (in order to be shiny and healthy).
→ to be以下を付け加えなくても構文は成立していますね。
こんな感じで文の構造を理解して、意味的に妥当な区切り場所を自分で設定した上で音読します。
というか、音読している途中に違和感を感じたり、文構造がよく理解できてないなと感じたら、立ち止まって文構造を見直すということです。
音読を通してこのような文構造に反応する感覚を身に付けることは、発音やリスニングなど音声面のトレーニングだけでなく、パート5〜7で速く正確に解くスキルを磨くことにもつながります。
それが学習の「質」です。
読み方がわからなくなったら音声を聴いて確認する
例えば、下のパート4問題に出てくる「1642」の読み方は何でしょうか?
(ビルの番地を示す数字)
わからなかったら朗読音声を聞いて確認します。
覚えようとする必要はありませんが、面倒くさがらずこまめに音声を確認するのが大切です。
正解は"sixteen forty-two"でした。
西暦○○年というときと同じく2ケタずつ読むわけですね。
こんな感じの要領で各パートの音読をしていきます。
実際には、「音読トレーニングを軸にしつつ疑問点を解消し、正解データベースを強固に築いていく」というところでしょうか。
音読サイクルを回す
最初はたいへん
この教材で言えば特にパート3、4は文が長いので最初は音読が大変です。
ある程度滑らかに読めるようになるまでは同じ文を連続して音読します。
一番つらい、たいへんな段階です。
英文が頭に入ってくればだんだん滑らかに読めるようになってくるのですが、それまではイライラします。
そこは我慢してやり通すしかありません。
しかしその我慢は必ず実を結ぶので、気長に取り組みたいところです。
慣れてきたら1回だけ読んで次へ行く
音読に慣れて滑らかに読めるようになってきたら、1回だけ読んで次に行くようにし、早くサイクルを回すようにします。
教材全体を1周する時間をできるだけ短くして、サイクル数を増やすのが良いです。
教材全体を最初から最後まで音読すると達成感が生まれます。
そして音読学習自体が長続きします。
また、時間を置いて何度も音読することで、暗記しようと意識しなくても自然に記憶に残るようになります。
完璧に読めるまで1つ1つの文を反復するのも一つの方法ではあるのですが、精神的に辛く、続けるのが相当困難になります。
よって、滑らかに音読できない部分があっても、早くサイクルを回すことを優先したほうがいいです。
順番を変えてみる
音読の進め方としては、
TEST1のパート1→パート2→パート3→パート4
→TEST2のパート1→パート2→・・・
と順番にやっていけばいいと思います。
ただ、なぜかわかりませんが、
「均等にやっているつもりなのに、TEST1の内容ばかり覚えている」
ということが起こるので、たまにTEST5→TEST4→・・・の順にするといいかも知れません。
まとめ
以上で、本教材を使って私が実践した音読について、すべて書きました。
別に何か特別なことをしているわけではありません。
むしろ、特別でないことを愚直に繰り返したこと自体が大きな成果を出せた理由だと思います。
上の要領で音読を繰り返すことで、私はリスニング満点、さらにはトータル満点(990点)を取ることができました。
次回以降もTOEIC教材を使った音読について書いていきます。