音読に徹した学習で、停滞していたTOEICスコアを更新して970点に到達した話を書きました。
そもそもなぜ「音読」がスコアアップにつながるのか?この記事で書いてみます。
リスニング力・読解力とは「実用的な語彙力」である
TOEICは、高度な文法・語彙を知っているか否かを問う試験ではありません。
特にリーディングパートは、時間をかければ、(満点とはいわないまでも)ある程度は正解できるような問題が大部分です。
難易度・専門性ではなく、スピードによって英語力を測ります。
すなわち厳しい時間制限の中でスピーディーに英文を処理する能力が試されるのです。
そしてこの「スピーディーに英文を処理する能力」とは、結局のところ、実用的な語彙力のことなのです。
リスニングも、リーディングも、「英語を英語のまま理解し処理する」ためには、実用的な語彙力がベースになります。
「実用的な語彙力」とは、英検1級のような難易度の高い語句を知っていることではありません。
比較的平易でよく使われる語句について、会話や文書の話題・文脈における意味、センテンス単位での構文・語法、コロケーション(語句同士の相性、結びつき)も含めて習得している語彙力のことです。
例えば、addressという単語がありますね。
単語集を使って学習していると、
「address=住所」
というふうに、単語に対して特定の日本語を結びつける訓練になりがちです。
ところが、TOEICで出題される場合にはむしろ、
- address this issue(この問題に対処する)
- give an address(スピーチをする)
といった意味で使われることが多いです。
「住所」からは、「対処する」、「スピーチをする」といった言葉が推測できません。
また、「address=住所、対処する、スピーチする」という覚え方をするのも苦痛です。
ですから、英単語に日本語の意味を表面的に結びつける覚え方では、先に書いたような「実用的な語彙力」を身に付けるのが極めて困難なのです。
語彙力習得の王道は「音読」。
実用的な語彙力を身に付けようと思ったら、単語単位で覚えようとするのではなく、会話や文書中のセンテンスを利用するのが良いです。
例えば、TOEIC パート2問題で出てきそうな
"Who'll be giving the address?"(誰が演説をするのですか。)
"The Company president."(社長です。)
という会話文を繰り返し音読します。
※上の会話例は、下記教材より引用。
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上記の会話例なら数秒で音読できるので、20~30回音読しても所要時間1~2分程度です。
意識的に暗記しようとするより、音読を利用したほうがよほど記憶に残りやすいです。
「覚えよう!」「覚えないと!」とあせる必要はなく、心配なら音読する回数を増やせばいいだけです。
上の会話を反復音読した経験があれば、別の問題で
deliver an address
という表現に遭遇したとき、「address=住所」ではなく「スピーチ」が頭に浮かぶようになります。この段階になれば、giveとdeliverの意味の違いなどは気にすることなく英文を理解し、設問に答えられるようになっているはずです。
「英語を英語のまま理解し処理できる能力」とは、このようにして少しずつ構築されていくものです。
また、TOEIC攻略の要である「パラフレーズ(言い換え)」への対応力も、音読を繰り返すことで身についていきます。
私個人は、単語集で単語を覚えるのが苦手で、大学受験のときも含めてほとんど使ったことがありません。
たぶん今後も使わないと思います。(発音記号が記載されている単語集なら、発音をサッと確認するのに便利なので、コンパクトな辞書としての利用価値はあると思います。)
語彙力強化はやはり音読が良いです。
TOEICの世界は狭い
TOEICは日常生活やビジネスでのコミュニケーションが対象ですが、実際には非常に限られた範囲の話題しか出題されない試験です。
政治・宗教・思想・犯罪・戦争・災害などに関する会話、文書はまず出題されません。
また、倒産・失業・失恋・訴訟など個人のネガティブな感情につながる話題も遭遇することはありません。
したがって、TOEICにおいては、語彙力を永遠に求め続ける必要はないのです。
ある程度の範囲内で反復学習することで、必要とされる語彙力にいつしか到達できるはずです。
そして、良質なTOEIC教材であれば、会話や文書の中で設問に直接からむ部分以外にも、TOEIC頻出表現が盛り込まれているものです。
会話・文書全体の意味をしっかり意味を確認した上で、パート1~パート7の問題文をまんべんなく音読すれば、同じ語句・表現を複数の場所で見かけることになります。
パート7の文書に出てきた単語をパート4のメッセージ中で見つけるといった具合です。
つまり全体を音読することで、一つの単語について複数の用例を学ぶことができ、語彙力がより確実なものになっていきます。
単に設問を解くだけの学習法では得られないメリットです。
次回も音読について書いていきます。