この記事では、TOEIC990点の管理人が英会話教材「イングリッシュ・クイックマスター英会話advanced」をレビューします。
「アルク教材だから無難なつくりになっているだろう」
となんとなく思って後回しにしていた[イングリッシュ・クイックマスター英会話advanced]をとうとう購入しました。
「そんな教材聞いたこともないんだけど」という方はこちらへ→ イングリッシュ・クイックマスター英会話advanced 公式サイト
イングリッシュクイックマスター英会話advancedは結論から言うと、気になる点が多少あるにせよ、トータルで非常に満足度の高い教材です。
じっさい、以下の賞を受賞しています。
本教材はスピーキングに有効なトレーニングをすべて網羅している上に、単なる英語スキルにとどまらず自分を有利にするコミュニケーション能力にまで踏み込んだ、かなり欲張りな教材になっています。
ということでレビューにいきましょう。
Contents
教材監修・執筆陣
本教材は、「1000時間ヒアリングマラソン」と同じく、アルクの通信講座です。
監修・執筆は以下のとおり第一線の英語教育専門家が担当。
いずれの方も英語教材制作の経験が豊富です。
・・・上智大学言語教育研究センター長
・・・桐朋中学・高等学校教諭
・・・東洋英和女学院大学教授 他
また、教材中の英文は5人のネイティブスタッフがチェックしているので安心感があります。
教材の概要
イングリッシュ・クイックマスター英会話advancedの学習は、テキストとCDがベースです。
加えて、専用アプリ、発音チェックツール、オンラインサポート、課題添削サービスなども提供されています。
教材を申し込むと2~3日で下の写真のような箱が送られてきます。
アルクマークがわかりやすく描かれています。
中身は下の写真のとおり。
モチーフはひまわり?よくわかりませんが、デザインが子供っぽくなくて良いです。
テキストは計8冊
•コースガイド
B5サイズ 1冊 24ページ
•テキストブック
A5サイズ 6冊 各111ページ
•別冊KEY117フレーズ集
1冊 新書サイズ 53ページ
各テキストの概要を説明していきます。
◆「コースガイド」
教材の内容物と学習の進め方の解説。
教材に含まれるものが多くて最初混乱しそうになりますが、この「コースガイド」を見れば何をどう使って学習を進めればいいのかわかります。
◆「テキストブック」
学習用メインテキスト。
1冊が1ヶ月(4週間)分で6冊構成。
テキストは小さめですが、書き込む学習はないので小さくて使いづらいと感じることはありません。
どうでもいいんですが、コンパクトさに衝撃を受けた「ネイティブイングリッシュ」のテキストと並べてみました。
ネイティブイングリッシュのテキストは依然として小さかった...。
話を戻します。
メインテキストはコンパクトですが、非常に情報量が多いです。
学習のポイント、発音のコツ、英文のニュアンスなど解説が豊富な点はさすがアルクという感じで、安心感、納得感があります。
イラストも随所にあり、グラフィカルな情報と英文とを連動させて学習していく構成になっています。
◆KEYフレーズ集
各ユニット(毎回のレッスン単位)で出てきた重要表現をまとめたもの。
メインテキストの復習として以下の練習に利用。
①日本語を見て英語に直す
②英文リピーティング
③バリエーションセンテンスをシャドーイング
CDは13枚
◆テキストブック用 12枚
平均94トラック・70分/CD1枚。
会話トラックでは、背景の雑踏の音を入れたり、電話での会話で相手側の音声に通話音声っぽいエフェクトを加えたりして、臨場感を演出しているのが独特です。
◆KEYフレーズ集用 1枚
98トラック、36分。
CDは専用のケースが付いています。
他にもいろいろあります
■coedas counterシート(6枚)
声を出した回数を記録するもの。
この教材はとにかく声を出す練習を重視しています。
「紙」のアナログさがスマホアプリと好対照。
ちなみにコエダスとは、
Correspondence Course in English for Daily and Actual Situations
(日常英会話のための通信講座)
とのこと。
■発音練習アプリ「MyET」
英文の音声のあとに続けてリピートすると、カラオケ感覚で発音を採点してくれるアプリです。
■アルク教材専用スマホアプリ「ALCO」
デジタル教材提供サイト「テストコ」からダウンロードした音声データ、テキストブック、フレーズ集を再生できるアプリです。
テキストブックをALCOで開くとこんな感じ。
PDFではなく、ALCO専用の電子書籍ファイルです。
スクリプトを見ながら音声も聴けるのはとても便利!
スマホで完結しているので使い勝手が良いです。
ALCOで表示されるのはスキットのスクリプトと訳だけですが、解説等がないため画面がスッキリしていてむしろトレーニングに集中しやすいです。
ファイルのダウンロードにはログインが必要ですが、いちどダウンロードすれば、その後はログイン不要。
面倒なのは最初のログインだけです。
ALCOではリスニング・リピーティング練習に必要なものだけに絞り込まれています。
集中して練習できるメリットはありますが、テキストでの学習の一部しかカバーしていないので、やはり基本はテキストベースで進めるものと考えてください。
下の写真は、音声ファイルをアプリで再生しているところです。
さきほどの「テキストブック」では音声再生速度は固定ですが、こちらは再生速度を0.5~3倍に設定することができます。
A-B間リピート再生も可能。
スクリプトや訳は見れませんが、CDの全音声が収録されているので、CDを完全に代替できます。
■Monthly Test
テキストブック1冊分の学習を終えたら問題を解いて提出します。
月1回提出(最初の提出期限は教材受け取りから1ヶ月後)。
■受講生向けウェブサービス
アルコムワールド「CAMPUS」というコミュニティサイトが利用できます。
学習の進め方など、学習コーチに質問・相談できます。
本記事作成時の学習コーチはワタナベコーチ(英検1級取得)。
■WEB採点サービス「テストコ」
オンラインでマンスリーテストの採点ができます。
期間は短いけど返金保証もあり
商品到着後8日以内であれば返品による受講キャンセル可能です。
学習内容の詳細
「イングリッシュ・クイックマスター英会話advanced」では、スキット(寸劇/短い会話)をもとに話す能力を多角的にきたえます。
Hapa英会話のような買い物や外食でのお決まりの会話だけではなく、同僚・友人・上司/部下など、身近な人物同士の会話を題材にします。
単に情報(データ)を伝えるだけでなく、自分の考えを、説得力を持って相手に伝えるスキルまでカバーしているのが本教材の特徴です。
日常会話はもちろん、ビジネスでも活用できる会話表現を習得できます。
48の「会話における機能」
本教材では、「フレーズ」や「イディオム」といった基本表現だけでなく、より上位の「会話における機能」48種類を習得します。
「会話における機能」とは、
- 映画などについて好意的な感想を述べる
- 否定的な発言をする
- 助けを求める
- (他人からの頼まれごとを)条件付きで承諾する
- 感謝しつつ(他人からの申し出を)辞退する
というように、実際の会話状況で自分が達成したい内容のことです。
情報を一方的に発するだけでなく、相手が納得してアクションを取ってくれるように自分の意思を伝えることを狙いとします。
※「会話における機能」についての補足記事も書いています。
「会話における機能」を意識して学習することで、会話が予想外の流れになっても臨機応変に対応できる力をつけていきます。
スキットを通して学習する
スキット(短い会話)には、いちおう名前のついた登場人物が出てきて、人間関係も設定されています。
ただし、スキット間の連続性はあまりありません。
学習システムが少し複雑なのですが、ざっくりいうと
・1週間に2つのスキットを学びます。
・2週ごとにReview(復習パート)があります。
・4週分が終わるとマンスリーテストを解いて提出します。これでテキスト1冊分。
このサイクルを6回(テキスト6冊分)やります。
「1週間にスキット2つだと、ボリューが少ないんじゃないか?」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし以下のように、スキットを使い倒して多方面からスピーキング力を鍛える練習メニューが用意されているので、ボリュームは少ないどころかてんこ盛りです。
- 英文を見ず、スキットの場面を描いたイラストを見てスキットをリスニング
- スキット全文音読
- 重要表現をリピーティング
- 重要表現のバリエーション英文をリピーティング
- 絵を見て、絵に対応した英文を言ってみる
- 絵に対応する正解英文をリピーティング
- スキットを1文ずつリピーティング
- 重要表現を使った会話でロールプレイ
- スキット全体でロールプレイ
上記は、一つのスキットでの1日目の学習内容です。
2日目は同じスキットを使ったシャドーイングなど、1日目とは別の練習をします。
上記はすべて、オーソドックスながら効果が実証されているトレーニングであり、無駄がありません。
まさにスピーキング力アップのための独習トレーニングをすべて採りいれた教材と言えるでしょう。
テキストでは、発音記号を使わずカタカナで発音のポイントが解説されています(下の写真左側)。
ですから、発音が苦手な人でも、とりあえず声を出して会話練習ができるようになっています。
また、英文ニュアンスや、TPOに適したフレーズの使い方についての解説も非常に充実しています(下の写真右側)。
どんな場面の会話を学ぶか?
1ヶ月目のスキットは下のような場面を題材とします。
( )内はそのスキットで学ぶ「会話における機能」。
- 映画を見終わったあとの美紀とJohnの会話(感想を表現する)
- バスケットの試合観戦についてのスーザンと守(まもる)の会話(否定的な発言、反論)
- コピー機の使い方について話している美紀とスーザン(助けを求める)
- パソコンのトラブルについて話しているJohnと守(他人の依頼を条件付きで承諾する)
- 残業中の太郎の手伝いを申し出るJane(他人の申し出を感謝しつつ辞退する)
- 結婚したばかりのマークが沈んでいる理由を聞きだそうとする由美(相手を励ます)
- (電話で)明日の予定について話す太郎とマーク(理解できなかったことを聞き返す)
- リサとの食事の時間に遅れることを電話で伝える太郎(理由を伝える)
下の写真は、上記2つめのスーザンと守のスキット。
1ヶ月目は「さまざまな人間関係」をテーマにしています。
親しい者同士の日常会話シーンという感じです。
2ヶ月目は海外旅行、3ヶ月目はビジネス、・・・というふうに月ごとにシチュエーションが移り変わっていき、6ヶ月間で定番の会話シーンをひととおり学ぶことができます。
学習内容については以上です。
「イングリッシュクイックマスター英会話advanced」の評価
明確な教材コンセプトがあるか?
スピーキングに必要な技能をあらゆる面からトレーニングするのがコンセプトです。
さらに議論・交渉・話題コントロールもできるような上級の会話力を習得します。
学習効果が期待できるか?
ロールプレイ、リピーティングなど効果実証済みのメソッドを使っているので当然、効果は期待できます。
主張・相談・交渉といった上位のコミュニケーション能力も学びます。
特に、抽象的な方法論ではなくスキットベースで具体的な表現を練習しながら学んでいくので、実際の会話シーンで使える実戦的スキルが身につくのが特徴です。
実践可能な内容か?
常にアウトプットを通して学ぶ教材なので、「声を出せる環境があるかどうか」が、実践するための大前提です。
移動時間やスキマ時間の学習では、すべてを実践するのは難しいでしょう。
学習ツール・サポートが充実しているので、自宅で声を出せる環境のある人なら、独習で実践していけます。
気になるところ・いまいちなところ
- 登場人物にはプロフィールや性格が設定されているものの、あまり一貫したストーリーはありません。物語性の面では、教材を通して連続したストーリーが進行していく「プライムイングリッシュ」や「英語ぺらぺら君」のほうが楽しめるかも。
- テキストが小さいのは良し悪し。自宅で練習するときは大きいほうが使いやすいですが、移動時・外出先でスキットの予習をしたり解説を読んだりするには小さいほうがもちろん便利。時間活用の観点からは、小さくて正解というところでしょうか......。
- ネイティブが英文を読んでいますが、けっこうゆっくりです。もう少し速くてもいいのかもと思いますが、スマホアプリ「アルコ」(最大3倍速まで可能)を使えば解決しますので問題ありません(別途代金はかかりません)。
- イラストがあるのはいいが、クセのある絵柄も多いです。好み次第。
- 教材名が長すぎです。覚えられません。優れた教材なのにあまり知られてない(ネットでレビューを見かけない)のは、名前が長いうえに特徴がないからではないでしょうか。あるいは、「ヒアリングマラソン」に広告費を取られて割を食ってる?
本教材が向いていない人
声を出して練習する環境がまったくない人は本教材を買っても持てあましてしまうので、購入前に学習環境を整備したほうが良いでしょう。
(声を出せないのが致命的なのは他の教材でも同じですが。)
総合評価・・・A+(特に優れている教材)
「出来あいのフレーズを暗記するだけでは、英語で意思疎通するのは難しいんじゃないだろうか」
「英会話では相手のペースに乗せられがち。少しでも自分からコントロールできるようになりたい」
そんな要望に応えられるのが、「イングリッシュ・クイックマスター英会話advanced」です。
他の英語教材では、「○○を英語でどう表現するか」を学ぶのにとどまっています。
仮にその「○○」をどうにか言えたとしても、相手が自分の思うとおりの反応をしてくれるとは限りません。
一つひとつの表現を覚える学習、それ自体は有効です。
しかしそれらの表現を使いこなして、会話を自分の望む方向へ進めていくスキルまでは、一般の教材では学べないのが事実です。
一方、イングリッシュ・クイックマスター英会話advancedは、「自分の目的を達成できる会話スキル」すなわち、
- 自分が求めることを達成するために、どうやって会話を組み立てていくか?
- 相手に理解してもらい、アクションを取ってもらうために、自分の主張にどう肉付けをするか?
- 相手の出方に対して、さらにどう対処すれば納得してもらえるか?
といったコミュニケーション上の戦略・戦術を意識しながら英会話を学べます。
具体的には、48のスキットを通して、会話の「機能」と「応用力」を習得していきます。
スキットは、単に会話表現を詰め込んだだけの会話例ではありません。
「一つのメッセージを相手に伝えるためには、どんな風に話を切り出し、肉付けしていけば良いか?」
を学べる内容になっています。
48の「機能」の中には、
- 条件付きで(相手からの頼みを)承諾する
- 感謝しつつ辞退する
- 部分的に賛成する・やんわりと反論する
- 丁寧に切り出す・言いにくいことを伝える
- 相手の思い違いや誤った知識を訂正する
- 話の軌道を修正する
- 相手の言い分を認めつつ再考を求める
など、会話中の「意見の対立」や「気まずい流れ」に対処する機能が多く含まれています。
たとえば映画の感想を話していて、自分が「いい映画だったね!」と言っても相手が同意しない場合もあるでしょう。
でも、意見が合わないからといって話題を終わらせてしまうのはさびしいですよね。
そんなとき、
「映画のストーリー、ビジュアル、音楽などに対してどう感じたか」
「俳優の演技はどんな印象だったか」
「自分の中でその映画はどんな位置づけか(一番好き、5本の指に入る、など)」
等をつけ加えて、「いい映画だった」という自分の主張をバックアップできれば、会話が盛り上がるんじゃないでしょうか。
上記はカジュアルな会話の例ですが、イングリッシュ・.クイックマスター英会話advancedではもっとシリアスなテーマも扱います。
同意してもらうのが難しい局面での会話の組立て方、表現の組み合わせ方などを学ぶことで、現実の生活で遭遇するトラブル・問題の解決につながる会話力を身につけていきます。
イングリッシュ・.クイックマスター英会話advancedは中・上級者向けの教材とされていますが、難しい単語や表現を単に覚えるだけの教材ではありません。
シンプルな表現を組み合わせる技術を身に付けることで、ことばに説得力を持たせ、効果的に相手に伝えられるようになります。
また、本教材では多彩なスピーキングメソッドが採用されていることも特徴です。
→リスニング、スピーキングのスキルを底上げし、英語を英語のまま理解できるようになる
→語彙・表現の運用力や反射神経が磨かれる
→応用力、「伝える力」も獲得する
上記のように、それぞれ異なる効果が得られるメソッドを実戦することで、死角のないスピーキング技能が得られます。
発音をチェックできる「MyET」や、発音の解説(テキスト)も活用しながら本教材のメニューをこなしていけば、発音とともにリスニングも当然上達していきます。
結局のところイングリッシュ・クイックマスター英会話advancedは、効果実証済みのオーソドックスなメソッドで真正面から英会話を学ぶ[鉄板教材]なのです。
旅行英会話のような単なる情報の送受信でなく、やりたいことを実現するツールとしての英会話力を身につけたい。
そんな人に、「イングリッシュ・クイックマスター英会話advanced」をおすすめします。