誰だって英会話をできるだけ短期間で効率的に習得したいと思うのは当然だと思います。
ですから、複数の英語スキルを同時に習得できる英語教材を使うのが良いと考えがちです。
しかし私は、一つの英語教材では一つのスキルに狙いを定め、そこにフォーカスして取り組むことをおすすめします。
同時に「あれもこれも」やろうと思うと挫折する可能性が高くなります。
少なくとも、最優先させるスキルを一つ明確に決めて、それ以外のスキルは「習得できればラッキー」という考え方で取り組むのが良いです。
トレーニングの核の部分に集中する
例えばこれから音読をするとします。
音読トレーニングにおいては、英文をスムーズに、英語の発音とリズムで読める力を養成することが目的であり、そこに一点集中します。
ここで一点集中と言っているのは「寝食を忘れて取り組め」とか、「徹夜で続けろ」とかそういった類の精神論ではありません。
例えば、下記のようなことを考えてはいけないということです。
- 知らない単語があっても、推測で音読できるようになろう
- 初めて聞く英文を(文字を見ずに)音読できるようになろう
- 理解できない英文があってもそのまま音読しよう(そのうち理解できるようになるはず)
要するに、音読をしながら「せっかく読むなら他にも何か身につけないと損だ」と考えて周辺のトレーニングをつまみ食いしてしまい、その結果音読そのものをおろそかにするような取り組み方ではNGです。
音読のやり方に法律があるわけではありませんが、音読は文法の面でも語彙/表現の面でも理解できている文章を読むトレーニングと考えるべきです。
自分の理解を超えているものを、音読を通して理解しようとすると、かえって音読から効果を引き出しにくくなります。
そんなことを考えなくても、音読そのものから十分すぎる効果が得られるのです。
ですから、まず音読しようとする文章の中で、わからない単語があれば調べて、発音も調べて、CDなどで発音・イントネーションも確認して、「内容的には理解できた、後は読むだけ!」という状態になってから、音読に入ることをおすすめします。
これが音読の効果を最大化する練習原則になります。
そのためには音源のある音読教材を使うこと、自分のレベルに合った素材を選ぶことです。
テキストに詳しい語注がついており発音記号も書いてあるなら自分で調べる手間が省けます。
そういう観点で教材を選ぶと良いでしょう。
森沢洋介さんの有名な「瞬間英作文」シリーズも、文型の操作スキルに特化したトレーニングをする教材として制作されたものです。
このシリーズは、ハイスピードで英文を作るトレーニングをする教材ですが、それなりに内容のある英文を作ろうするとすぐに挫折してしまうことを考慮し、中学1年レベルの単語のみを使って例文が構成されています。
そうやって語彙の面での負荷を極限まで低くすることで、色々な文型の英文をとにかく速くたくさん作るトレーニングに特化できるようになっているのが特徴です。
この「瞬間英作文」シリーズをみっちりやっても語彙力はまったく獲得できません。
しかし、適切な構文を選び、そこに肉付けをして、意味の通った英文を作る技能については非常に効果が高いため、英会話スキル向上に役立つ教材として高く評価されています。
「フレーズ暗記」教材なら、フレーズを覚えることを最優先すべきです。
初期は単語・発音などを確認することが必要ですが、ある程度それらができたら、英文を見たり聞いたりせずフレーズを言えるようになるまで練習しましょう。
いつまでも英文を見ていては覚えられません。
日本文を見て英文に直す、イラストから英文を作る、などの練習をすることです。
複数の教材を並行して実践するのは可
一つの教材で(ひとつのトレーニングで)あれこれやるのは良くないとここまで書いてきましたが、複数の教材を並行して実践していくのは悪くないと思います。
その場合も、一つひとつの教材をやる際には、その教材が何のスキルをターゲットとしているのかをはっきりさせて、そのスキルを最優先させて取り組みましょう。
ターゲットを絞って取り組むことで、効果が体感できるのが早くなります。
効果が感じられることが英語学習を継続させ、加速させるためのもっとも大切なポイントです。
英語は「広く浅く」ではなく、「せまく深く」が基本です。
「面」ではなく「点」で攻めます。
「点」を攻め続けると、いつか「点」が広がりを持ち、隣接した「点」と重なりを持つようになります。
そうなると、「フレーズが飛び出してきた」「聞き取れなかったものが聴き取れるた」という体験が起こり始めます。