英会話を始めたいと思って、教材はどれがいい?スクールはどこがいい?とみんな迷ってネットで検索したりするわけですが(この記事を読んでくれているあなたもたぶん)、英会話学習の全体像を考えたことがありますか?

 

教材なりスクールなりを利用して実際に学習を始めてみたとき、「この練習は何の役に立つのかな?」と疑問を感じる場面も出てくるでしょう。

やっていることの意義がわからなくなると、結局興味を失って挫折してしまうかもしれません。

 

そこで、現在(あなたが英会話初心者だとします)から、終着点(英会話ができるようになった時点)を明確にすることで、どんなスキルを習得すれば良いかが見えてきます。

英会話のプロセスを分解してみる

英会話は、相手から英語の言葉を受け取り、相手の言っていることの意味を理解し、それに対するあなた考えを英文にして相手に発する行為です。その過程を下のような形でモデル化してみます。

英会話のプロセス
1.相手が言ったことを聞き取り、意味を理解する(リスニング)
2.相手の言葉に対して、自分の思考、感情、情報等を相手に発するメッセージとしてまとめる(とりあえず「思考」の過程と呼ぶことにします)
3.自分の思考、感情等を英文に直す(英作文)
4.できた英文を相手に発する(発音)

もちろん、実際のコミュニケーションでは相手の表情から意図を読んだり、ジェスチャーを交えて表現する、絵や物を使って説明するなど言語以外の手段も利用しますが、ここでは言語の部分での英会話を考えます。

 

上記のうち2の「思考」の過程は日本語での会話においても通常やっていることであり、英会話教材で学ぶものではありません。

コミュニケーションスキル、あるいはネゴシエーションスキルとでもいうべきものです。

(※英語を学んだ結果、日本語を介さずに思考することが可能になる人はいると思いますが、英会話教材で直接習得を狙うものではないと私は考えています。)

 

そうすると、英会話教材は1のリスニング、3の英作文、4の発音のスキルのいずれかを獲得するようになっているはずです。

一般にスピーキング教材と言われる英会話教材は3と4のスキルに関連するもので、このブログは基本的にその分野の教材について検証していくブログです。

 

日本人がもっとも訓練しておらず、したがってもっとも苦手なのが上記3の英作文ですが、これはさらに次のように分解できます。

英作文のプロセス
3-1. 構文生成(英文の骨格を作る)
3-2. 表現(適切な語彙・表現で上記の骨格に肉付けする

ここで、3-1の構文生成の過程が英会話習得の一番のネックになります。

日本語と英語は構造がまったく異なるためです。

 

もうすこし具体的に言うと英語は主語と動詞が必ず必要であり、主語・動詞・目的語(又は補語)の順番が固定しています。一方、日本語は語順の規則性が弱い、そもそも主語がなくても文が成り立つなどの点で英語と異なっています。

 

したがって、日本文を機械的に置き換えても英文を作ることができません。そこで文全体の意味を理解して英語の構文を選び、そこに語句を乗せていくという複雑な作業をすることになります。

 

英会話を習得するには、このスキルを獲得する過程が不可欠です。

見方を変えれば、英会話習得の初期からこのスキルを意識して取り組むことで、英会話全体の学習がスムーズになります。

各種英会話教材のターゲットスキル

上記の1-4に対して、各種英会話教材がどの過程のスキルをターゲットにしたものなのか、確認してみましょう。

音読教材

「ぜったい音読」などの音読教材は、主に4(発音)と1(リスニング)のスキルを獲得・強化するものです。

声を出して英文を読むことと、英文を聞き取ることを反復することによって、英語の構文・発音・リズム・イントネーションなどを体内に吸収していきます。

英会話初期にはもちろん中心的トレーニングとなりますが、プロ通訳者など上級者でも音読を続ける人はいるようです。

フレーズ暗記型教材

フレーズ暗記型教材に分類される教材は、良く使われるフレーズをそのまま暗記することによって、3(英作文)の基礎を形作るものです。

定型的な文については、暗記したフレーズをあてはめることによって、日本語から英語に直すことができるようになります。

 

ここで、「フレーズ」というのはかなり幅の広い概念で、3-1の「構文生成」に使われるものも、3-2の「表現」に使われるものも「フレーズ」と呼ばれます。厳密な線引きルールはありません。

 

また、初心者向けフレーズ暗記型教材の多くは、すでに英文として出来上がっているものを暗記する形式の教材であり、上記3-1の構文生成のスキルを強化する効果はあまり高くないものが多いです。

瞬間英作文教材

いわゆる瞬間英作文の教材は、3-1の構文生成のスキルを集中的に強化するものです。

特に森沢洋介さんの瞬間英作文シリーズは、「英文を見てしまえば馬鹿らしいぐらいに易しい単語」を使うことで、上記3-2の「表現」の過程の負荷を取り除いて、3-1の「構文生成」のスキルに特化した訓練を行います。

 

せまい意味での「瞬間英作文」は、日本文をまるまる英文に直すトレーニングですが、パターンプラクティスと呼ばれるトレーニングは、既存の英文の一部を変化させて新たな英文を作る練習をするものです。

負荷を軽くした瞬間英作文と考えることもでき、やはり構文生成のスキルをきたえるものです。※表現力強化を目的としたパターンプラクティスもあります。

どのスキルを獲得しようとしているか?

スピーキング強化用の英語教材で獲得するスキルは、ほぼ上記の3種類に分類されます。

 

英会話教材ごとの違いは、単発の文で練習する、特定の場面での会話形式で練習する、ロールプレイ形式で練習する、など練習形態の違いであり、実質的に行うワークと得られるスキルは同じものです。

 

まともな英会話教材であれば、上記のスキルのいずれかを獲得強化できるように設計されているはずです。

あなたがやっている英会話教材はどのスキルを強化するためのものなのかぜひ確認し、それを意識して練習に取り組むようにしてください。

 

極端な話をすれば、瞬間英作文教材の英文をただ音読していてもあまり意味がないし、フレーズ暗記型教材だけを何年も学習しても上記の「構文生成」のスキルが向上しにくいのです。

効果を最大限に引き出すためには、教材のコンセプトとターゲットスキルの理解が大切です。

 

今後も、教材の選び方について書いていきます。

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