英会話教材のセールス文章では、「文法のことは忘れてください」とか「文法を使わずに英会話をマスターします」などといった文句がうたわれているのをよく見かけます。
この記事では、「文法無しで英会話を身につけられるか?」について書いてみます。
学生時代にさんざん文法の勉強をさせられたのに英語を話せるようにならなかった人が多いわけですから、「英会話を習得するために文法を勉強するのは間違い」「文法知識が英会話習得を邪魔している」という思いを持つのは不思議ではないでしょう。
そういう人たちの共感を得やすいためか、英会話教材の製作者は「英会話に文法は不要です」「文法書はゴミ箱に捨てて下さい」などといった宣伝文句を書いていたりします。
文法とは何のこと?
英会話教材の世界で「文法」という場合、言う人の立場によって文法が何を指しているか変わってくるので注意が必要です。
たとえば英語教材製作者が「文法は不要です。英会話を学ぶのに邪魔になります。」という場合、たいていは「文法用語」や「文法体系」のことを言っている事が多いです。
文法用語とは、「主語」「動詞」「目的語」など文法の勉強で天下り式に出てくる用語です。「主語」「動詞」くらいならまだついていけても、「時制の一致」「仮定法過去完了」「関係代名詞の制限的用法」…とかになると何のことかわからなくなってきます。
これらの用語は、英語を教える側の都合で用いられる用語なので、知らなくても英語を話すことは可能です。
たとえば英語が得意な人に、
I have to go.
のtoは「前置詞」なのか、「不定詞」なのかと聞いたら、わからないと言われるかも知れません。
しかし意味を聞けば、「私は行かなくちゃいけないんだ」という意味だよと答えてくれるでしょう。
このように文法用語を知らなくても英会話はできる(教師、通訳等プロは別)というのが、「文法は不要」と主張する派の言い分だと思います。
一方、実際に英語を話すときには一定のルールに沿って話さないと会話が成り立ちません。
上の文の例で言えば、行かなくちゃいけないと言いたいとき、
I have go.
では通じません。
have toの代わりにmustを使うなら、
I must to go.
ではなく
I must go.
としなければならないのです。
このような、実際話すときに必ず適用されるルール/パターンという意味での「文法」は英会話に必要なものであり、文法を無視して会話はできません。
「文法は必要」派の主張はこういう意味だと思います。
まとめると、「文法用語や文法体系を覚えることを目的とした文法学習は、英会話習得には不要だが、実際の会話の際に適用されるルールとしての文法は覚える必要がある」と言えるでしょう。
話すための文法は絶対に必要です
実際の会話で適用されるルールとしての文法、すなわち相手に通じる英文を作るための文法は絶対に必要です。
文法というより英語の文構造の理解と言ったほうがいいかも知れません。
文構造を理解することで、速く正確に英文の意味が把握できるようになり、また相手に通じる的確な英文を作ることができるようになります。
文構造を理解しないままでは、英会話そのものの能力も、TOEICスコア等も伸びて行かなくなります。会話だけでなくリーディングで後戻りせずスラスラと読むのにも、英文構造を把握する「英語回路」は必要になります。
話すための文法を身につける方法は?
文法書を読んで理解するだけでは、文法を自在に使いこなせるほどに身につけることはできません。
簡単な文あるいはゆっくりであれば読んだり聴いたりできるというレベルにとどまります。いざしゃべろうとしたときすぐにしゃべれるようにはなりません。
話すための文法を身につけるには、次の二つの練習をするのが良いと言われます。
(1)音読(音声を聴いてのリピーティング、シャドーイングも含む)
(2)簡単な文を素早く大量に作る練習
(1)の音読すなわち声を出して英文を読む練習を数多く繰り返すことで、英文の持つ構造、パターンを頭にしっかり取り込むことができます。
また(2)の簡単な文を素早く大量に作る練習をこなすことで、頭の中に登録された文法を使って正しい構造の文を作る能力(いわゆる英語回路あるいは英語脳)が形成されていきます。
どちらの練習も、目的は文法を身につけることですが、文法という言葉を意識する必要はありません。また、英文を暗記しようとする必要もありません。英文そのものを丸覚えするのではなく文構造を把握し素早く英文を読んだり作ったりする力を強化するのが目的です。
従来の日本の英語教育ではこの二つのトレーニングがほぼ全く行われて来ませんでした。音読に授業の時間を割いていたら標準課程を終えられないし、簡単な文を大量に作るトレーニングは最近になって知られるようになったからです。
「英会話学校に行ってみたけど全く話せるようにならなかった」とか、「フレーズ集などを暗記しているけどあまり会話力が付いた気がしない」と感じている人は、これら二つのトレーニングをやってみることで能力が大きくアップする可能性があります。
話すための文法を身につける学習におすすめの教材
音読の教材は、英文がある程度収録されているものなら何でもいいと思いますが、難しい英文を無理して音読する必要はありません。
初心者であれば「スピークナチュラル」がおすすめです。超スローリスニング音声を聴き、一語ずつ確認してから音読することで、英文の構造やリズムを正しく頭に浸透させることができるでしょう。自己流の読み方でなく「正しく」すなわちお手本をできるだけ真似して音読するのが大切です。
簡単な英文を素早くたくさん作るトレーニングをする教材としては、「英語ぺらぺら君中級編」「パッとSPEAKING 60」「24Days English」があります。
この中では「英語ぺらぺら君中級編」がおすすめです。「英会話における瞬発力、反応力をきたえる教材」という通り、素早く英文を作って答えるトレーニングがしっかりと組み込まれています。質問に答える形式のクエッショニングという学習方法で、文構造を理解するとともに会話フレーズを学ぶことのできる優れた教材です。
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